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2023年に注目の教育キーワード10選

特集 教員の知恵袋

 学習指導要領の改訂を期に、児童・生徒一人ひとりに合わせた教育の推進が求められています。一方で、学校教育を担う教員不足や教員の労働環境の改善など、軽視できない課題も残されています。

 今回は、2023年に注目したい教育キーワード10選を紹介します。それぞれのキーワードから、学校教育の進め方や教員の労働環境を振り返ってみてはいかがでしょうか。

1.こども家庭庁の4月スタート

 2022年6月15日に、こども家庭庁設置法が可決・成立しました。これにともない、2023年4月1日に、内閣府の外局として“こども家庭庁”が設置されます。

 こども家庭庁では、子どもの年齢や発達度合いに合わせて、次に挙げる内閣の重要政策の事務をサポートすることを任務としています。

・子どもおよび子どものいる家庭の福祉増進
・保健の向上
・子育てに対する支援
・子どもの権利利益の擁護 など

 また、以下に挙げる3つの姿勢を重視しています。

1.子どもの目線、子育てをしている人の声を大切にすること
2.地方自治体と協力すること
3.NPOや地域住民と話し合い、協力すること

出典:内閣官房『こども家庭庁設置法(令和4年法律第75号)の概要』『こども政策の推進(こども家庭庁の設置等)』/内閣官房 こども家庭庁設立準備室『こども家庭庁について

2.第4期教育振興基本計画(2023~2027)

 教育振興基本計画とは、教育基本法に基づいて、日本の教育振興に関して政府が策定する総合計画のことです。

 2022年2月7日、文部科学大臣の末松信介氏は、2023年度~2027年度の第4期教育振興基本計画の策定を諮問しました。第1期~第3期の教育振興基本計画とそれぞれの基本的指針は次のとおりです。

第1期:2008年度~2012年度
基本的指針:今後10年間を通じて目指すべき教育の姿

第2期:2013年度~2017年度
基本的指針:一人ひとりが多様な個性・能力を生かして、他者と“協働”しながら新たな価値を“創造”していくことができる「生涯学習社会」の構築

第3期:2018年度~2022年度
基本的指針:教育を通じて生涯にわたる一人ひとりの“可能性”と“チャンス”を最大化すること

 第4期教育振興基本計画では、教育改革の継続的な実施のほか、幼児教育から大学院までが有機的なつながりをもつこと、幅広い社会のニーズに応えることなどが求められます。

出典:文部科学省『次期教育振興基本計画の策定について』『教育振興基本計画』『次期教育振興基本計画(令和5(2023)年度~令和9(2027)年度)諮問の概要

3.質の高い教師の確保(教員不足対策)

 児童・生徒の多様化や教育DX、少子化など、近年の社会変化を踏まえて新たな学校教育が求められています。一方で、課題となっているのが、小・中学校や高等学校など、各学校種における教員不足です。

 新たな学校教育を担う人材としてはもちろん、教員不足の対策として、質の高い教師を確保する必要があります。そのためには、教職の魅力向上を図ることが重要です。

 文部科学省は、有識者や教育委員会・学校関係者から構成される“質の高い教師の確保のための教職の魅力向上に向けた環境の在り方等に関する調査研究会”(以下、調査研究会)を設置し、2022年12月20日に初会合が開かれました。

 調査研究会では、次の項目について検討が行われます。

・給与面、公務員法制・労働法制面の在り方
・学校における働き方改革にかかる取組み状況、学校・教師の役割
・学校組織体制の在り方等 など

出典:文部科学省『質の高い教師の確保のための教職の魅力向上に向けた環境の在り方等の現状に関する参考資料』『「教師不足」に関する実態調査』『質の高い教師の確保のための教職の魅力向上に向けた環境の在り方等に関する調査研究会の設置について

4.通常の学級に在籍する特別な教育的支援を必要とする児童生徒への支援

 文部科学省は、2022年1月から2月にかけて、“通常の学級に在籍する特別な教育的支援を必要とする児童生徒に関する調査”を実施しました。

 2012年に、“通常の学級に在籍する発達障害の可能性のある特別な教育的支援を必要とする児童生徒”の調査を行って10年が経過した今、障害のある児童・生徒をめぐる状況にさまざまな変化がありました。

 今回の調査は、通常の学級に在籍する特別な教育的支援を必要とする児童・生徒の実態のほか、彼らへの支援状況を明らかにすることで、今後の施策や教育の在り方を検討する際に役立てられます。

 調査項目のうち、“知的発達に遅れはないものの、学習面または行動面で著しい困難を示す”児童・生徒への支援状況については、次のような変化が見られました。

「個別の教育支援計画」を作成しているか
・作成している:7.9%(2012年)/18.1%(2022年)
・作成していない:88.2%(2012年)/79.7%(2022年)

「個別の指導計画」を作成しているか
・作成している:9.9%(2012年)/21.4%(2022年)
・作成していない:85.6%(2012年)/75.8%(2022年)

 これらの結果を見ると、この10年間で、児童・生徒への支援状況が少なからず改善していると読み取れます。

出典:文部科学省『通常の学級に在籍する特別な教育的支援を必要とする児童生徒に関する調査結果(令和4年)について』『通常の学級に在籍する特別な教育的支援を必要とする児童生徒に関する調査結果について

5.個別最適な学びと協働的な学びの一体的な充実

 2017年から2019年にかけて、学習指導要領が改訂されました。新たな学習指導要領で示される資質・能力の育成を着実に進めるには、ICTを最大限に活用しながら、“個別最適な学び”と“協働的な学び”の一体的な充実を図ることが必要です。

 個別最適な学びと協働的な学びの一体的な充実を図り、全国的に広めるには、以下に挙げるような取組みが欠かせません。

・デジタル教科書・教材・ソフトウェアなど、多様な学びの手段を適切に組み合わせる“ハイブリッドな教育環境”の整備
・モデルづくり、研修を含む学校・教員への伴走支援

出典:文部科学省『学習指導要領の趣旨の実現に向けた個別最適な学びと協働的な学びの一体的な充実に関する参考資料』『個別最適な学びと協働的な学びの一体的な充実に向けた教科書・教材・ソフトウェアの在り方について~ 中間報告(論点整理) ~

6.「令和の日本型学校教育」を担う教師の養成・採用・研修等の在り方で中教審答申

 中央教育審議会は、2022年12月19日に「令和の日本型学校教育」を担う教師の養成・採用・研修等の在り方について文部科学大臣に答申しました。

 今回の答申では、「令和の日本型学校教育」を担う教師の養成・採用・研修に関する制度を、今後どのような方向性で進めていくかが示されました。

教師の養成・採用・研修に関する制度の今後の方向性
・子どもたちの学びとともに、教師自身の学びを転換して、“新たな教師の学びの姿”を実現する
・教師一人ひとりの専門性を高めつつ、民間企業等に勤務経験のある教師などを取り込むことで、教職員集団の多様性を向上させる
・多様な教職志望者へ対応するために、教職課程の柔軟性を高める

出典:文部科学省『中央教育審議会(第132回)の開催について』『『令和の日本型学校教育』を担う教師の養成・採用・研修等の在り方について~「新たな教師の学びの姿」の実現と、多様な専門性を有する質の高い教職員集団の形成~(答申案)』『「令和の日本型学校教育」を担う教師の養成・採用・研修等の在り方について

7.「令和の日本型学校教育」を推進する地方教育行政の充実

 2022年11月14日に、「令和の日本型学校教育」を推進する地方教育行政の充実に向けた調査研究協力者会議が行われました。

 「令和の日本型学校教育」では、2020年代を通して実現すべき学びの姿が示されています。

「令和の日本型学校教育」を通じて実現すべき学びの姿
・“個別最適な学び”と“協働的な学び”の一体的な充実
・“主体的・対話的で深い学び”を実現するための授業改善

 「令和の日本型学校教育」の実現を目指すうえでは、外部に開かれた教育行政を展開して、次のような取組みを組織的に行うことが重要といえます。

教育委員会事務局の機能強化
・一般行政職と教員出身者の連携
・外部人材の積極的な登用
・大学や民間企業などの外部機関との連携 など

教育委員会会議の活性化
・教育委員会による議題の提案または意見交換の機会の設置
・勉強会や研修会の実施による教育長、教育委員の資質・能力の向上 など

出典:文部科学省『「令和の日本型学校教育」を推進する地方教育行政の充実に向けた検討 関係資料(1)』『「令和の日本型学校教育」を推進する地方教育行政の充実に向けた検討(論点(案))

8.教職員給与特別措置法(給特法)の見直し

 2022年12月20日、文部科学省は、教職員に時間外勤務手当および休日勤務手当を支払わないとする“教職員給与特別措置法(以下、給特法)”の見直しを検討する有識者会議を開きました。

 日本の教員の業務は長時間化しており、近年の実態は極めて深刻です。持続可能な学校教育において、教育成果を維持・向上させるには、教員の働き方を見直すとともに、子どもたちに対して効果的な教育活動を行うことができるようにすることが急務といえます。

 給特法の制定から半世紀が経過した今、教員に求められる仕事内容が変化しているほか、当時の想定を大きく超過する長時間労働勤務が課題となっている実態があります。

 これらを考慮して、文部科学省は、教員の勤務実態や働き方改革の進捗状況を把握するために勤務実態調査を実施。2023年の春頃に調査結果を公表する予定です。その後、調査結果を踏まえた給特法等の法制的な枠組み、処遇改善の在り方を検討するとしています。

出典:文部科学省『公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法の一部を改正する法律の概要』『永岡桂子文部科学大臣記者会見録(令和4年11月18日)

9.教員勤務実態調査の結果を踏まえた学校の働き方改革

 文部科学省は、2016年に実施した教員勤務実態調査以来、6年ぶりに教員勤務実態調査を実施しています。

 2016年の教員勤務実態調査では、小・中学校の教員のほか、副校長や教頭、指導教諭、教諭、養護教諭などを対象にして調査が行われました。調査項目は、教員の1日当たりの学内勤務時間や、年間当たりの有給休暇の平均取得日数、教諭による勤務時間の個人差が大きい業務などさまざまです。

 この教員勤務実態調査によって、看過できない教員の勤務実態が明らかになったことで、働き方改革が推進されています。

 教育委員会における学校の働き方改革に関しては、取組み状況調査が行われています。

 2021年度の取組み状況調査では、複数の項目で取組み実施率が上昇しています。

47都道府県において2019年度の調査に比べて1割以上増加している項目の例
・時間外勤務の縮減に向けた業務改善方針や計画の策定
・ICTを活用した事務作業の負担軽減
・学校閉庁日の設定
・勤務時間外の問い合わせに備えた留守番電話の設置およびメールによる連絡対応の体制整備 など

出典:文部科学省『学校における働き方改革について』『令和3年度 教育委員会における学校の働き方改革のための取組状況調査【結果概要】』『教員勤務実態調査(平成28年度)の分析結果及び確定値の公表について(概要)

10.学校の部活動(休日の活動)の地域移行

 文部科学省は、2022年9月1日に開催した“学校における働き方改革推進本部”において、2023年度以降、休日の部活動を段階的に地域移行していくとの方向性を示しました。

 喫緊の課題となっている学校の働き方改革の推進において、部活動や教科担任制の導入、教員免許更新制など、教育委員会や学校現場から見直しを求める声が高まっています。これらの要望を受け、学校の働き方改革の推進、生徒にとって望ましい部活動環境の構築の実現を目指す第一歩として、部活動の地域移行を進めていくことになりました。

 休日の部活動における生徒の指導や大会の引率は、学校の職務として教員が担うのではなく、地域の活動として地域人材が担います。

 地方自治体は、教員に代わって生徒の指導や大会への引率を担う地域人材の確保に向けて、以下に示すような取組みを行う必要があります。

・人材バンクの整備や活用
・関係団体との連携
・人材の育成からマッチングまで、民間人材を活用できる仕組みの構築 など

 なお、学校の部活動の地域移行や部活動指導員については、こちらの記事で詳しく解説しています。併せてご一読ください。

 部活動指導員の活用と2023年度から始まる部活動の段階的な地域移行

出典:文部科学省『第4回学校における働き方改革推進本部を開催し、部活動の改革などについて議論を行いました』『学校の働き方改革を踏まえた部活動改革について

求められる「令和の日本型学校教育」の推進と教員の労働環境改善

 2023年以降、児童・生徒一人ひとりの学びを最大限に引き出す「令和の日本型学校教育」や、教員の労働環境の改善において、ICTをいかに活用できるかがカギになると考えられます。

 多様化する児童・生徒のニーズや社会変化に応じた学校教育の実施においては、教員の養成、採用により、質の高い教師を確保することも欠かせません。

 学校が外部機関や地域と連携しながら、教員にかかる負担の軽減を図りつつ、教育関係者が一体となり、新たな学校教育を進めることが求められます。

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