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「いのちの授業」をつくる

19面記事

書評

鈴木 中人・玉置 崇 著
命の大切さ、実感させるには

 いのちは大切だと知らない子はいない。しかし、それを心の底から本当に大切だと実感し、認識させるのは「じつはとても難しいこと」と言う。正直で、謙虚な著者の重い言葉だ。
 その「じつはとても難しい」授業に挑み、その実りを確かに、具体的に、事実として語り、見せつつ、千校を超える学校を訪問し、30万人もの人々に感動を与え続けている人がいる。著者、鈴木中人氏だ。長女景子ちゃんが3歳で小児がんを発病、小学1年生で昇天という体験から会社を早期退職、「いのちの授業」に取り組み、講演しつつ全国を回る。「景子は死んでしまう子ではなく、生き抜いている子だと教えてくれた」と父が、「景子ちゃんの体が冷たい。風邪をひくといけないからタオルケットかけて」と涙を流す母親の言葉が切ない。「子供を亡くす逆縁の悲嘆…」「絶対、親より早く死んではいけない」と心の底から鈴木氏は訴える。
 もう一人の共著者、玉置崇氏は、公立中学校長、愛知県教委指導主事、教育事務所長等を歴任し、現在、岐阜聖徳学園大学教授を務める教育現場のエキスパート。鈴木氏の実体験に根差した授業や講演について、現場の教師としての豊富な実践経験を基に、分析、考察を加え、実践者の「いのちの授業」への貴重なポイントを簡潔、明快に提示する。共感、共鳴が結んだコンビならではの珠玉の一冊だと強く心を打たれた。
(1760円 さくら社)
(野口 芳宏・植草学園大学名誉教授)

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