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論点・日本史学

19面記事

書評

岩城 卓二・上島 享・河西 秀哉・塩出 浩之・谷川 穣・告井 幸男 編著
高校「探究」の授業づくりにも

 こんな本を高校・大学時代に読みたかった。本書を手にして最初に思った感想である。評者は大学の歴史学科で学んだ。中・高の歴史は暗記中心で通史を学び、そのゴールとして大学入試があった。大学では「日本史概説」という科目はあったが、実際は担当教授の研究テーマ(確か荘園史)の講義だった。大学や担当者にもよるだろうが、歴史学科の新入生はまず、日本史のどの時代でどんなことが論点になっているのか、大枠をきちんと学ぶ必要がある。
 高校の学習指導要領改訂に伴い、「日本史探究」という科目が生まれた。日本史探究は主題や問いを中心に構成された学習内容となっており「人物名や年号を暗記する」という従来の学習方法とは異なるのが特徴だ。
 本書の構成は、「各時代の総論」「議論の背景」「論点」「探究のポイント」となっている。用語解説や参考文献も明記され大変読みやすい。特に「探究のポイント」は高校の日本史探究の授業には大変参考になる。
 従来の歴史授業や入試の歴史とは違う歴史の「見方・考え方」がここにある。暗記教科のイメージ脱却と、いまだにある教科書の脚注の暗記を強いるような出題をしている大学の入試改善につながってほしい。
 高校教員はもとより、歴史学を志す学生、さらには大学の担当者にぜひ読んでほしい一冊である。
(3960円 ミネルヴァ書房)
(中村 豊・公益社団法人日本教育会事務局長)

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