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一刀両断 実践者の視点から【第267回】

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論説・コラム

行動できる「道徳」に

 道徳に関する議論となると、すぐに教材が話題に上る。その段階では、机上の空論となりがちであり、国語科のような読解へと引っ張られてしまう。そこに目指すべき道徳の目標は存在しない。
 3.11の悲惨な現場で、ヤンチャな若者が、家族を失いながらも、人助けに走っている姿に触れた。身内を流されながらも、悲しみを堪え、能書きを言わずに行動を起こした。そこに真の「動徳」の姿を見た。
 道徳とは、読解力や理解力の問題ではなく、困っている人が居たら動けるかどうかにあるのではないだろうか。この肝心なところに気づかせ、行動させるとなると、今の教材解釈で云々している国語化道徳では、何の役にも立たない。
 価値観とは、行動する時に瞬時に現れるものである。ヤンチャだった彼らは授業さえもまともに受けてはいなかったが、指示されることもなく行動に移した。
 いかに評価が高くても行動できない児童生徒を育てたならば、その授業は何の意味を持つのだろうか。道徳を行動へと具現化できない授業にとどめている教師やそれに導いた方々が、全てとは言わないが、今のいじめ、不登校、青年の自死、家庭内殺人を止められない素地をつくったとは言えまいか。
 (おおくぼ・としき 千葉県内で公立小学校の教諭、教頭、校長を経て定年退職。再任用で新任校長育成担当。元千葉県教委任用室長、元主席指導主事)

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