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未来に向けて本気で頑張る人との出会いが収穫~自らの力で将来を切り拓いていくために~

11面記事

企画特集

研究施設で最先端技術を学ぶ

将来の進路やキャリアについて考える修学旅行に

コロナ禍のリスク管理としてバス旅行を選択
 現在、修学旅行では新型コロナウイルス感染症に対するリスク管理として、近隣県でのバス旅行を選択する学校が増えている。新潟市立内野中学校(佐藤靖子校長)も、8台のバスをチャーターし、昨年12月7日から2泊3日のスケジュールで関東近県を巡る修学旅行を実施した。
 修学旅行を担当した栗原弘幸教諭は「2年生は275人と大所帯であることや、ちょうど日程を決めた時期がデルタ株の流行と重なったこともあり、感染の影響が出た場合でも、日程の縮小や時間の融通が利きやすいバス移動を選択しました」と語る。そこには、過去2年間は不自由な旅程を余儀なくされた中で、今年こそはどうにかして満足する旅行に行かせてあげたいという教職員の強い思いがあった。
 また、同校では3年時に地域の未来について提言する学習活動を行っており、修学旅行もそれにつながる、将来の進路やキャリアについて考える機会と捉えている。「県外に出て、さまざまな場所や人に触れることが新たな発見や考えを深める重要なきっかけになるからです」と話す。

地場産業や先端技術に触れる旅程
 行程的には、初日が地場産業の金属加工で世界に名を馳せる燕三条の工場見学から、小江戸の風情を残す埼玉県川越市へ。2日目は、日本を代表する学術・研究都市である茨城県つくば市に向かい、JAXAをはじめ20以上の研究施設で最先端技術について学び、最終日は宿泊先の那須ハイランドパーク(栃木県)を体験して帰路に着く日程となっている。
 「出発前は再び感染が広まる兆候があり、健康チェックにも細心の注意を払い、幸いにもほぼ全員の生徒が参加できました。また、コロナ禍前の旅行先だった関西圏の時は新幹線等の乗り換えが慌ただしかったのですが、バスでの移動ではスムーズで、費用も抑えることができました」と当初の計画通りに修学旅行を実施できたことに感謝した。

事前・事後学習と組み合わせて深い学びへ
 一方、今回の修学旅行は「総合的な学習の時間」の取り組みとして位置付けており「Try~自分自身の成長に挑戦~」をスローガンに、事前・事後学習と組み合わせて一人一人の深い学びにつながるよう、プロジェクト型学習である課題追究を中心に、SDGsやキャリア教育を核に取り組んだ。燕市から講師を招いて金属加工の歴史やオリパラ選手村で使用するカトラリー採用秘話、職人の素晴らしさなどについて話をしてもらったり、つくば市で実践しているSTEAM教育の動画を見せたりし、生徒が主体的に課題を持って学ぼうとする意欲を育んだ。
 また、事前学習で生まれた疑問を解決するために、訪問先への質問の精度を高めて臨んだ。その結果、建築研究所に対しては「持続可能な住宅、建築都市とは今の都市とどう違うのか」。農業ベンチャー企業には「会社を設立してから挫折したこと、乗り越えた方法」。つくば研究支援センターには「今、起業を計画している人はどのような種類が多いのか」など、本質を突いた質問も出てきたと振り返る。
 事後学習としては、訪問や質問の回答を新たな気付きと価値づけ、レポートをまとめている。今後は、最も学ぶ価値があった事柄をキーワードとし、他学年へもアウトプットしながら3年時のプロジェクト型学習へつなげていく予定だ。

学びの先に何かがあることを知る
 その上で、栗原教諭が今回の修学旅行を通して大きな収穫と捉えているのが、未来に向けて本気で頑張っている大人と出会えたことだ。茨城県内の旅行会社の社長が、20年後の将来について熱く語ってくれたことやゲノム編集技術で栄養価の高い新しいトマトを作っているベンチャー企業、無電柱化プロジェクトをきっかけに起業した元公務員の方やJAXAで宇宙飛行士の大西卓哉さん等に出会えたことは、生徒にとっては学ぶ目的を知る貴重な経験になったと強調する。
 「こうしたさまざまな体験を糧に、自分で進路を切り拓き、未来を創り出せる人材が出てくれるとうれしいですね」と期待した。


燕三条の工場見学

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