人権・平和教育を軸にした修学旅行へ~京都から広島を巡るルートに変更~
12面記事被爆者の講話
学びを深める修学旅行を目指して
前年の南三陸地方への移動教室を踏まえて
今年度、墨田区立桜堤中学校では、従来は京都・奈良だった3年生の修学旅行をより深い学びにしようと、「人権・平和教育」の視点を踏まえて京都から広島を巡るルートに変更した。
その理由について窪宏孝校長は、前年が東日本大震災から10年目という節目の年であったことから、例年行っていたスキー教室を取り止め、宮城県の南三陸地方に1泊2日の移動教室を実施していたことを挙げる。それには、同校が墨田区の防災団地エリアにあり、普段から地域の方々が防災教育に関わるなど災害に対する意識が高いという背景もあった。
「今回の修学旅行先の変更には、人の命の大切さ、平和の大事さを訴えたいという思いがありました。2年時の移動教室で震災によって多くの人たちが亡くなった東北の地を踏み、当時の悲惨な状況を学んだことで、その後の防災に関する授業や避難訓練にも、より一層気持ちが入るようになったと感じています。そのことを踏まえて、修学旅行では広島に行き、平和を深く学んでもらおうと考えました」
事前学習に加え、学習のまとめにはムービー制作も
その言葉通り、5月24日から2泊3日の旅程の中でメインとなったのが、2日目の広島だ。ここでは被爆者の方の講話を聞いた上で「広島平和記念資料館」を見学。そのあと市内に残る、被爆の実相を伝える「碑」をガイドとともに巡り、原爆の悲惨さや平和の尊さについて考えを深めた。
その上で、修学旅行を担当した泉宮一喜主任教諭は、事前学習として京都・広島について調べ、修学旅行への励みになるようなポスター新聞づくりに取り組ませたと語る。加えて、「旅行前がちょうど社会科の授業で第二次世界大戦や原爆について詳しく習うタイミングだったため、現地での学びに活かすことができました」と振り返る。
現地で原爆や戦争のことを知った上で、事後学習では、「持続可能で平和な未来を創るために私たちはどうするべきか」をテーマに、学習のまとめとなるムービー制作を行った。同校では1人1台タブレットによるICT活用を積極的に進めており、修学旅行中にもタブレットを持参し、こうした作品づくりにも活かしている。「ただし、学習のまとめよりも動画全体のパフォーマンスが目立ってしまって、もう少し現地で学んだことをしっかりと表現させたかったというのが反省点。次年度以降は、こちらで動画の構成を丁寧に用意するなど改善していきたい」と抱負を語る。
来年度は北方領土学習をテーマに北海道へ
さらに、次年度は今回の修学旅行を軸にした学びをより進めるため、北海道・道東方面への旅程を計画。北方領土をテーマにした平和学習にトライする方針だ。道東を目的地とすることで、内閣府から補助金が下りることも大きな呼び水になった。
修学旅行の行き先の変更について窪校長は、「このような修学旅行の例に限らず、前例を翻すには生徒や保護者、教職員にしっかりとコンセプトを伝えていくことがこれからの課題」とした上で「今後も、子どもたちによりよい学びを提供することを第一に考えていきたい」と笑顔で話した。
泉宮主任教諭は、「私自身、一昨年に北方領土の元島民の方の話を聞きに行き、感銘を受けました。元島民の方の高齢化が進み、今の中学生は当時の話を聞ける最後の世代になるかもしれません」と話した。
右から窪宏孝校長、泉宮一喜主任教諭