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一人一台端末とICT学習アプリで広がる「学びの実感」

11面記事

ICT教育特集

ICTを活用した国語の授業の様子

 建学の精神「実学に勤め徳を養う」に基づき、生徒一人一人の個性、能力、資質を伸ばし、未来への可能性を拓く教育を続けている浦和実業学園高等学校。普通科と商業科を設置して生徒の幅広い進学ニーズに応える、さいたま市の伝統校だ。ICT教育を現代的な実学の一つと捉え全校で推進中だ。「知識を吸収し深めるには、自ら学ぶ力が必要。一人一台端末は授業だけではなく学校と家庭とを結び、いつでも学習可能な環境を創出するための重要なファクター」と、齋藤清幸校長は語る。生徒、教職員の一人一台端末環境のもと、主体的に学ぶ力を育成するためのICT学習アプリの活用や授業について紹介する。

充実した設備で教育の幅が広がる

 同校は一人一台端末と高速通信ネットワークの整備を3年前に開始。現在、生徒、教職員ともiPadを授業や校務で活用している。各教室には大型ディスプレイを完備し、コンピューターを活用した授業は日常の風景として定着している。昨年夏に完成した新2号館には、PCルームが5室あり、大型モニタやホワイトボード、プロジェクターを備え複数の画面を同時に投影できる設備を誇る。机も可動式でグループワークなどアクティブラーニングに対応する。これらの環境を生かし、生徒の学びを深めるため、カシオ計算機のICT学習アプリ「ClassPad.net」を導入し、さまざまな教科で活用している。

辞書とデジタルノート機能で学習理解が深まる

 2年生の国語では、小テストや音読テストなどのアウトプットの機会を増やすのに、「ClassPad.net」の課題提出を活用している。生徒は古文の基礎文法を小テストで確認して提出した後、一人一人が問題を音読しながら録音し提出。助動詞「らむ」の見分け方を周りと協力しながらデジタルノートに整理し、そのノートをディスプレイに映しながら発表した。答えにたどり着くまでの考え方はいろいろで、瞬時に他の人の考え方を知ることができるのがメリットだ。発表する生徒は自分の書いたノートを見せながら堂々と発表していた。
 担当の田渕直弘教諭は「らむ」の辞書での引き方や、その結果をデジタルノートに貼り付け、ポイントを書いたふせんを近くに配置するやり方を見せながら授業を進めていく。デジタルノートの使い方を見せることで「学び方」も示せるのが板書との一番の違いだ。
 文法の内容確認は単調になりがちだが「ClassPad.net」を使うと生徒の授業への積極性を引き出せるという。「これまで意見発表に消極的だった生徒も、『ClassPad.net』を使うことで進んで発信するようになり、意見を授業内容に反映させやすくなった」と田渕教諭は話す。
 授業に参加した関谷穂南さんは「意見をタブレットで提出し、すぐに採点やコメントが返却されるのがよいところ。学校で残した課題もそのまま家に持ち帰り終わらせて提出ができる。授業中の分からない単語を自分で調べながら参加できるのもいい」と語った。

意見を出しやすいから学習意欲が高まる

 2年生の英語の授業では、演習問題を解いて解説を聞くだけでは単調になりがちな授業を、「ClassPad.net」を利用して生徒とコミュニケーションを取ることで、より詳しく楽しく学べている。
 単語の意味を辞書機能で調べながら解いた後、ふせん機能でポイントを生徒に送信して解説する。より大事なポイントは板書することで生徒の理解を促す授業展開になった。1つの英語の長文を読み、その意見に賛成なら赤、反対なら青のふせんに意見と理由を英作文にして提出する方法も生徒にも人気だ。集めたふせんは授業内で一覧できるので、他の人の単語の使い方や構文が参考になり、学習意欲の向上につながっている。
 「ClassPad.net」の提出機能を使ったスピーキングの宿題では、生徒がどこまで英語の発話ができるかが把握しやすくなった。この方法だと内気な生徒も意見を出しやすい。担当の荒井廉征教諭は「いろいろな生徒の意見を反映させ、双方向で切磋琢磨する授業展開ができる」と語る。
 授業を受けた稲垣優晟さんは「一人一台端末になったことで授業の大切なポイントが手元で見れる。課題提出やアドバイスの送受信機能があるので、先生に課題提出がスムーズにできて、すぐに採点してもらえる。先生のアドバイスも伝わりやすくなった」と、授業内容が深く理解できることを実感している。
 同校は中高一貫部も併設しており、そこでもICT教育は盛んだ。国語も教える穴澤良幸教頭も「ClassPad.net」を活用して中学生がJ-popの歌詞を分析するユニークな授業を試みている。
 同校は日々の丁寧な授業のほかにも、進学に向けた補習や講座、部活動や学校行事も盛んだ。多様な進路希望に沿ったコースに生徒が集まるため、2400人を超す校内は多様性に富んだ一つのコミュニティだ。同校の充実したICT環境や手厚い学校のサポートは、生徒一人一人の学びの実感を高めている。

 「浦和実業学園高等学校」公式HP=https://www.urajitsu.ed.jp/sh/
 「ClassPad.net」公式HP=https://classpad.net/jp/


浦和実業学園高等学校 校長 齋藤清幸氏

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