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コロナや立地条件、女性の視点など、新たな課題を踏まえて避難所の取組指針を改訂

11面記事

企画特集

内閣府(防災担当)

避難所における生活環境の改善に向けて
 災害時に開設する地域の指定避難所では、新たな課題となる新型コロナウイルス感染症への対策、避難所の生活環境等の改善、防災機能設備等の確保、立地状況を踏まえた適切な開設、女性の視点を踏まえた避難所運営など、さまざまな対応が必要になっている。
 こうした状況を受け、内閣府は昨年4月に「避難所における良好な生活環境の確保に向けた取組指針」を改訂した。市町村等においては地域の特性や実情を踏まえつつ、発災時に避難所における良好な生活環境が確保されるよう、平時より本取組指針を活用することを求めている。
 平時における対応としては、避難所の組織体制と応援体制の整備が重要となる。そのため、各避難所の運営責任者を決定しておくほか、市町村が中心となり学校等施設の管理者、自主防災組織等との間で避難所運営会議を開催するなど日頃からの協力関係を構築しておくことが大切になるとともに、その際には女性の参画を促進することを強調している。
 研修や訓練の実施では、感染症対策を含め、担当職員に対し、実践的な研修や訓練を実施しておくことや、要配慮者を対象とした研修を実施すること。物資確保体制の整備では、他の自治体との災害援助協定の締結、事業者団体等との物資供給協定の締結等を図っておくとともに、義援物資が大量に搬入されてくることも踏まえ、民間事業者の活用を含めた運搬・配付体制についても整備する必要があるとしている。

ホテル、企業施設の避難所利用も視野に
 また、2021年には全国の公立校の3割が浸水や土砂災害のリスクが高い場所にあるとの調査結果が公表されるなど、指定避難所の立地そのものにも課題が浮上している。このため、代替施設を確保するケースも生まれているが、やむを得ず指定している場合には、開設する災害の種類を想定するとともに、災害の状況や施設・敷地の被害等の状況を踏まえ、必要に応じて安全性の確認等を行った上で開設すること。あるいは、ホテルや企業の施設などを活用できるよう事前に協定を締結しておくことを示唆している。
 指定避難所施設の防災機能設備(非常用発電機等、飲料水、冷暖房機器、ガス設備等、通信設備、断水時のトイレ対策等)については、平時から整備状況を確認して、災害時に必要となる防災機能設備等の容量や個数などを検討し、関係省庁の各種補助制度、地方財政措置等を活用して充実強化を推進すること。また、防災機能設備を保有しない場合には、あらかじめ近隣の公共施設や民間事業者と協定を締結し、災害時に必要となる防災機能設備の協力を得られるよう準備しておくこととしている。
 避難者の健康管理及び避難所の衛生管理では、問診や検温を行うなど健康状態を確認するとともに、暑さ寒さ対策に留意した上で避難所内の適切な換気や清掃、消毒など衛生管理を適切に行うこと。加えて、感染症患者や発熱者には専用のスペースないし個室を確保する、動線計画を含め、必要に応じて専門家の確認を受けることが適切としている。

女性の視点を踏まえた避難所運営を
 女性の視点を踏まえた避難所運営では、女性と男性では災害から受ける影響やニーズが異なることを配慮し、運営責任者には必ず女性を配置することを指摘。これまでの災害時の避難所では、更衣室がない、トイレが足りない、生理用品等の備蓄がないなどの問題が報告されてきたためで、プライバシーの確保を含めて女性の視点による運営体制が重要になっているからだ。

水道管の老朽化に伴い、断水の可能性が高まる
 こうした取り組み以外にも、これまでの大規模災害ではさまざまな課題が生まれている。特に顕著になっているのが、東日本大震災で260万戸、熊本地震では45万戸に及んだ断水だ。昨秋の台風15号でも静岡市清水区で大規模断水が起こり、復旧まで2週間を要したことは記憶に新しい。
 全国的に上下水道管の老朽化が進む中で、水道施設の耐震化対策が追い付いていない現状があり、大きな災害が起きれば避難所においても断水する可能性は高まっている。断水によりトイレの使用や⼿指の流水洗浄が思うようにできなくなると、感染症リスクが高まり、これまでの災害時の避難所ではノロウイルス等の集団感染も発生している。このような実情からも、避難所においては排泄物を下水道管に流さなくても一定期間貯留できるマンホールトイレや、雨水貯留槽やプール水を利用できる仕組みなどの準備をしておく必要がある。
 また、現代の情報収集や安否確認等で欠かせないスマートフォンの充電切れも、被災者にとってはストレスを生じる原因になることが指摘されている。とりわけ、避難所での生活が長期化した場合は、日常生活が戻らないことによるストレスや不安を助長することになるため、ポータブル蓄電池やソーラーチャージャーを備え、平時から対策を講じておくことが重要になる。

避難所運営のデジタル化を進める
 さらに、避難所運営の円滑化や情報共有のスピードアップを図る手段として、管理方法のデジタル化も進めていかなければならない。デジタル庁は、昨年12月から避難所の運営にデジタル技術を活用する実証事業を開始している。具体的には、避難者にスマートフォンで氏名や家族構成、どの避難所に入ったかなどの情報を入力してもらい、避難所の状況把握や迅速な支援につなげることが目的になる。
 また、民間事業者においても、避難所の受付に必要となる避難者情報を登録する仕組みとして、事前登録したQRコードから読み込む、事前登録が難しい高齢者などはマイナンバーカードのICチップから読み取る方法などが提案されているところだ。

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