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避難所開設時における教職員の役割

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まずはライフラインの維持に努める

 近年では大地震発生時はもとより、豪雨による河川の氾濫や土砂崩れなどの際に学校の体育館等を地域の避難所として開放するケースが増えている。学校の教職員においては、こうした避難所の開設時の管理運用について十分に備えておかなければならない。
 もちろん、市町村から派遣される職員や自主防災組織と連携してあたることが重要になるが、災害規模によっては、そうした連携体制が最初からスムーズに機能する保証はどこにもない。したがって、公立学校の9割以上が避難所に指定されている中では、少なくとも被災から数日間は学校を管理する教職員が主体となり、避難所の運営を請け負うことになることを想定しておく必要がある。
 避難所の運営では、被災者の安心・安全確保が第一となることから、まずは電気や食料、トイレの確保といったライフラインを維持することが重要となる。とりわけ、寒暖差の激しい時期に電気が滞った場合は被災者の健康に直結するため、自立型発電機やLPガスを利用した災害用バルク、石油ストーブなど代替となる機材の操作に慣れておくことが大切になる。
 また、食料の配布では備蓄品だけでなく、炊き出し等の可能性も考えておく必要があるほか、断水が発生した場合は学校内のトイレが使えなくなるため、簡易トイレや仮設トイレの備えをしておくこと。マンホールトイレが整備されている場合も、いざというときに備えて設置訓練をしておくことが重要になる。あるいは災害時の通信手段となる、防災無線の使い方や校内無線LANの公衆Wi―Fiへの切り替え方にも慣れておかなければならない。

避難所トラブルが起きないように対処する

 さらに、避難所では幼児からお年寄りまで多様な年齢層や、妊婦、車いす利用者などの要配慮者も一緒に生活することになるため、学校の教室棟も開放した臨機応変なゾーニングを設定すること。このような区分けは新型コロナウイルスをはじめ、衛生環境が保ちにくい避難所の感染症対策としても有効である。
 避難所生活が数日間に及ぶ場合は、被災者の不平不満に対処することが大きな役割になる。これまでの震災時では不衛生なトイレ環境でのストレスや健康被害が軋轢を生む要因となっている。また、マンホールトイレを使う場合も男女の設置数や車いす利用、夜間の照明設置にも気を配る必要がある。そのほか、避難所のトラブルとしては食事の配分に始まり、安否確認、避難者スペースや支給品の奪い合い、電源コンセントの取り合い、窃盗、子どもが騒ぐ、ペットの同伴などが考えられる。

平時から設備機器の操作に慣れておくことが重要

 学校を避難所として機能させる場合に難しいのは、教職員自らが被災者であるにもかかわらず、災害救援者としての役割を担わなければならないからだ。だからこそ、平時から行政の担当部署と災害時の対応についてマニュアルを作成し、役割分担を明確にしておくことが教職員の負担を減らす最善策となる。つまり、学校としては迅速に避難所を開設し、なるべく早期に自主防災組織に引き継ぐ道筋を立てておくことが大切といえる。
 その一方、災害時がどんな状況になるか誰にも分からないのは事実であり、そのときのための準備を教職員は怠ってはならない。また、そんないざというときの備えとして防災機能の強化を進める必要があるが、役立つはずの機材や機器も人の手を介して初めて利用できるものである。「せっかく整備してあったのに、災害時に全く使われなかった」といったケースはもう止めにしたい。そのためには教育委員会は導入だけでなく、それが実際に活用できるかどうかまでを受け持つ責任を負うべきである。
 加えて、局地的な集中豪雨などにより河川の氾濫が危惧される中では、積極的に避難所を開設することも防災機能を高める手段の一つになる。なぜなら、そこから人的・物的な課題をあぶり出し、次の災害時に備えて改善していくことが防災・減災に向けた本当の力になるからだ。

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