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子どもの事実に向き合う 教師の5つの価値観の転換

14面記事

書評

齊藤 慎一 著
子ども主体の学びを目指して

 読み終えて、「良い本と出合えた」と心から思った。なぜなら、子どものリアルな姿が伝わってきたからだ。子どもの姿に真摯に向き合い、考え、悩み、楽しんで授業を創造する姿が見えてきた。
 第一章で、小学校教師の著者の経験が語られている。以前、授業の流れを書いたノートを偶然に見た子どもが言ったそうだ。「こうやって台本が決まっているんだ。その通りに勉強しているだけなんだね」と。子どもから見ると、授業は台本通りと思えたのだろう。鋭い指摘にどきっとした。
 著者は指導観・子ども観・授業観・子どもから見た授業観・学力観の五つの教育観を転換し、子ども主体の学びを創ろうと提言する。子どもの主体性を信じることで、指導技術がより有効となり、実践を省察することが教育観の転換に必要という。
 子どもの事実から授業を創る。授業の中での教師の出方を考える。そのためには、子どもの事実をしっかり見取る力が必要だ。その子に合ったタイミングで効果的なアドバイスをする。新しい視点を与えるのだ。教師はその子にとって最適と感じる方法が選べる環境をつくることが大事という。個別最適化とは、こういうことなのだと思った。
 本書の魅力の一つは授業での子どもの言動が描かれていること。児童が主体的に生き生きと学ぶ姿が目に浮かんでくる。ぜひ参考にしていただきたい。
(2090円 東洋館出版社)
(藤本 鈴香・京都市総合教育センター指導室研修主事)

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