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いじめを哲学する 教育現場への提言

14面記事

書評

佐山 圭司 著
哲学者、思想家らの学説で読み解く

 北海道教育大学に勤務する哲学史・思想史の研究者である著者が「学問の世界と教育現場の橋渡し」を企図して、教育課題の「いじめ」と研究対象である「哲学」を融合した。
 序章「私たちのいじめ理解にひそむ問題」から始まり、終章「『公平な観察者』から『完璧な偽善者』へ」と「いじめ」を「哲学」する旅は、ソクラテスからハンナ・アーレントなど古今東西の哲学者、思想家の学説に触れる旅でもある。途中には「いじめは『人間的』か、それとも『非人間的』か?」(第1章)、「いじめは『社会的』か、それとも『反社会的』か?」(第2章)、「『人格』とは何か?」(第3章)という道標を用意した。
 著者自身も影響されているという「子どもを純粋無垢とするルソー主義的な子ども観」、いじめを直視するためには、教育関係者にも多いように思えるこの「子ども観」を放棄することが「最初の一歩」だとする。とりわけ第2章を構成する「『社会のせい』でいじめが起こる?」「いじめは欲求不満の『はけ口』か?」「いじめは『スケープゴート』か?」「『学校がある』からいじめが起こる?」などの全10節は政治、心理、社会、動物などの学問の知見も、いじめ理解に一役も二役も買っているように語られ、引き込まれる。
 では、防止策は―。「いじめを哲学」した結果の提案は、あるにはある。それをどう評価するか。それぞれの読者に任せてみたい。
(2970円 晃洋書房)
(矢)

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