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三河の金次郎像全調査

15面記事

書評

三浦 茂 著
像出現の歴史的背景も考察

 力作の報告書である。評者は現職時代に二宮金次郎像がある学校に勤務したことがあるので、拝読しながら懐かしさでいっぱいになった。
 著者は愛知県出身の高校の社会科教員。明治期の教育に興味があり、洋風の木造校舎に引かれ、各学校を巡るうち金次郎像が目に留まったという。
 同じ像が全国各地の学校にあるのは世界的に珍しいと思い、同県三河地区を対象に調査を開始。10年をかけて全ての学校を訪ね、写真を撮り、紹介の文章を書いた。
 さらには、2章の「二宮金次郎像の成立」、3章の「二宮金次郎の社会学」で、歴史的考察もしている。金次郎像の多さの事実とその考察を読み、日本の学校教育の歴史研究に新たな一ページが加わったと思った。
 冒頭の豊橋市の小学校だけでも、52校のうち現在も32校に金次郎像があるという。その多さに圧倒されてしまう。
 二宮金次郎像がある学校では、それを活用して、道徳の授業が展開されるとよい。まきを背負って本を読んでいる金次郎像は、学校教育が目指す「知・徳・体」のバランスの取れた教育の具体的な姿の一つである。
 本書を読み、さらに二宮尊徳の生き方を調べていくという道徳も考えられよう。
(2750円 春夏秋冬叢書)
(庭野 三省・新潟県十日町市教育委員会教育委員)

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