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学校するからだ

12面記事

書評

矢野 利裕 著
生身の生徒と教師のエピソード

 小学生の頃、運動会の行進の予行練習をしている時に、ふとした拍子にスキップしてしまった。それを見つけた教師に怒られたことを今でも覚えている。
 そもそも学校の成り立ちは、明治時代の富国強兵政策の一環である。皆で同じような歩調で行進するのも、心を一つに合わせるためのものである。それを邪魔するような振る舞いは決して許されないのだ。
 改めて考えてみると、学校という場には、何かと決まり事が多い。それが行き過ぎるとブラック校則などと呼ばれたりもする。ある時には、生徒を抑圧する装置にもなる。
 他方で、一人一人の子どもは生身の身体を持ち、思い思いの欲求を抱いて学校生活を送っている。従って、学校と子どもは、常にぶつかり合う関係にあるのだ。
 本書は、中学・高校の国語科の教師が、自らの経験に基づき、学校という場において生徒と教師との間で生じるエピソードを記述したものである。ある時には、生徒と教師が互いの身体を共振させ、そして、ある時には互いの身体がすれ違う。両者の身体の微細な動きによって、コミュニケーションが深まったり、途切れたりする。
 部活動や授業、行事における生徒と教師の何げない行動の一場面が、学校という場の特殊性と教育性を見事に描き出している。
(1980円 晶文社)
(都筑 学・中央大学名誉教授)

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