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屋内運動場非構造部材の耐震対策や空調設置を加速

10面記事

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2018年度までに耐震対策の完了を目指す
 東日本大震災では、学校の屋内運動場の天井パネル材が落下して避難所として使用できない学校が多数発生した。これを教訓に屋内運動場の吊り天井の落下防止対策が急ピッチで進められ、現在では未実施が全体の0・5%になるまで改修が進んでいる。だが、吊り天井以外の非構造部材(天井材・照明器具・ガラス・外装材・設備器具等)の耐震対策実施率は着実に上昇しているものの、2021年の調査でも52・1%にとどまっている。
 こうした防災機能の強化は、国策となる「防災・減災、国土強靱化のための5か年加速化対策」でも重視されており、文科省では2025年度には非構造部材の耐震対策実施率を70%に押し上げ、2018度には完了する方針を打ち出している。
 一方で、私立学校においても耐震性がない建物がいまだ2千校近く残っており、吊り天井の落下防止対策は8割、非構造部材の耐震化は4割程度と遅れが目立っているため、国庫補助率を2分の1にかさ上げするなどして早急な改修を求めている。

軽量で安全性の高い膜天井改修が進む
 非構造部材の耐震化では既存の天井材を撤去する方法もあるが、躯体や配管が剥き出しになり見映えが悪くなるのはもちろん、断熱性や収音にも影響が出る。つまり、光熱費のアップや周辺環境への騒音問題が発生する可能性がある。
 そのため、美観性に優れ、落下しても人に危害を及ぼす可能性の低い軽量なシート状の膜天井に改修する学校が多くなっている。加えて、こうした膜素材は多湿環境への設置にも適していることから、常に湿気にさらされ、落下リスクが高くなる室内プールの天井改修にも使われている。
 また、天井材に埋め込まれる形で設置されている照明器具については、天井撤去に伴い、梁等の支持材に直接取り付ける形に改修するなどの対策を実施することが求められている。これは、バスケットゴール等についても同様の対策が必要といえる。

空調設置は国庫補助率をかさ上げ
 一方、屋内運動場では空調(冷房)設備の設置率が昨年9月時点の調査で約15%と遅れていることも課題になっている。しかも、この数値はスポットクーラーの設置を含めてのものだ。
 気候変動が顕著になる中で、通気性の悪い体育館や武道場では普段のスポーツ活動における熱中症対策としての必要性も年々増している。しかし、初期投資やランニングコストが高額になることから、財源に余裕のない自治体では後回しにされてきた経緯がある。
 したがって、文科省では今年度から断熱性が確保されている体育館への空調設置(新設)について補助率を引き上げ、2025年度に35%、2035年度には95%まで設置を伸ばしていくことを目標にしている。
 なお、断熱性の確保がされている体育館に限定しているのは、過大な能力の空調機が必要となったり、光熱費が過大となったりと、効率的・効果的な施設整備ができないためである。それゆえ、断熱性の無い体育館には、空調設置と併せて断熱性確保のための工事を実施する必要がある。
 そのほか、避難所となる学校施設では、電気、ガス、水道、情報通信等の機能を保持できるよう、代替手段も含めた対策を予め講じておくこと、あるいは、車いす利用者や高齢者など要配慮者のための専用のスペースやバリアフリー化なども求められている。

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