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何のための学校教育か 「反逆者」を育てるために

12面記事

書評

アルフィー・コーン 著
友野 清文・飯牟禮 光里・根岸 香衣弥 訳
上からの教育改革を鋭く批判

 サブタイトルは、「『反逆者』を育てるために」。著者のアルフィー・コーン氏はアメリカの教育家であるが、一般の教員にはなじみがないであろう。本書はその雑誌論文をまとめたものである。
 しかし、その内容は興味深い。「教育改革」の目的が「使いやすい労働者」や「既存の体制を受け入れる市民」の育成となっていることや「企業の利益を追求する人は教育政策の作成にあたっては特権的な立場に立つべきではない」「教育政策の決定にあたって、『世界経済の中での競争力』を基準とすることに反対する」と述べている。
 ここまで読むと、わが国の教育政策も心配になってくる。アメリカの学校も標準テストの点数に一喜一憂している現状があり、これに対し批判を強めているが、日本も入試をはじめ同様の課題が依然として残っている。
 さらに「おかしいと思ったら声を上げて、変えていく勇気」を持つことの大切さを説いている。教育改革は押し付けでなく、現場で成し遂げられることが、著者の信念だ。とりわけ「世界に対して口答えができるようにするべき」という主張が印象的である。
 アメリカの教育政策への批判ではあるが、日本の教育を考える上でも示唆に富んでいる。わが国でも「学習者主体」を目指しているが、課題は多い。タイトル通り、まさに何のための学校教育か、考え直すきっかけとなる一冊である。
(1980円 発行・丸善プラネット、発売・丸善出版)
(中村 豊・公益社団法人日本教育会事務局長)

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