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感情コントロールに苦しむ子ども 理解と対応

18面記事

書評

楠 凡之・丹野 清彦 著
背後に潜む発達要求に目を向け

 授業中にフラフラと立ち歩く子ども。ちょっとしたことでカッとなり、暴言を吐いたり、暴力を振るったりする子ども。一人の子どもの立ち居振る舞いを放っておくと、他の子どもたちに伝染していき、学級崩壊のような教室になってしまうこともある。管理職からは指導能力不足を指摘され、力で抑え付けようとしても事態は収束しない。どう対処していけばよいか悩み苦しむ教師も少なくないのではないだろうか。
 本書に登場する14の実践事例は、右記のような問題状況に対応していこうとする教師のリアルな姿を描き出している。
 本書が指摘しているように、感情をコントロールできず、度重なる問題行動に至るのは、発達障害などの個人特性や保護者とのアタッチメント(愛着)の形成不全などが関与しているという。そのために、安心感を持てず、生きづらさを抱えているのだ。その際、問題行動の背後に潜む発達要求を適切につかむことが、何よりも求められる。言葉にできない子どもの思いを代弁して言語化することも、教師の大事な仕事の一つなのだ。
 子どもだけでなく、保護者も教師もまた生きづらさを抱えていることがある。子ども、教師、保護者が互いに信頼し合えるような関係をつくり上げ、誰か一人にだけ原因を押し付けないことが大事だと本書は教えてくれる。
(1870円 高文研)
(都筑 学・中央大学名誉教授)

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