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熱中症の症状と学校での応急措置~重症化を避ける冷水浴用のバスタブや経口補水液の導入を~

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体のバランスが崩れ、体温が上昇する
 熱中症とは、体温が上がり、体内の水分や塩分のバランスが崩れたり、体温の調節機能が働かくなったりして、体温の上昇やめまい、けいれん、頭痛などのさまざまな症状を起こす病気のことである。屋外だけでなく、室内で何もしていないときでも発症する。
 特に、子どもは体重あたりの皮膚や呼吸から失われる水分が大人と比べて多く、汗をかく機能や腎臓の機能が未熟で脱水症になりやすい傾向にある。加えて、身長が低いほど地面からの照り返しの影響を強く受けるため、大人以上に高温の環境下にいる状況にある。したがって、顔が赤く、大量に汗をかいている場合には深部体温が上昇していることが考えられるため、一刻も早く涼しい場所で休み、水分や塩分を補給してあげることが重要になる。
 熱中症の症状としては、軽症の場合「立ちくらみ」や「筋肉のこむら返り」などが起きる。中等症になると、これに全身の倦怠感や脱力、頭痛、吐き気、嘔吐、下痢等の症状が加わる。このような症状が現れた場合には、直ちに医療機関へ搬送する必要がある。さらに重症ともなれば、高体温に加え、意識障害が見られるようになる。けいれんや肝・腎障害を合併することで、最悪の場合は死亡に至ることもある。

緊急時の体制を確立しておくことが重要
 熱中症の重症度を判断するポイントは、意識がしっかりしているか、水を自分で飲めるか、症状が改善したかの3つ。学校ではこのような緊急事態に迅速かつ的確に応急処置を講じるため、

 (1) 熱中症発生時の教職員の役割分担を定め、全員が理解しておくとともに、職員室、保健室及び事務室等の見やすい場所に掲示する。
 (2) 緊急時に連絡する消防署、医療機関、校内(管理職・養護教諭・学年主任等)及び関係諸機関等の所在地及び電話番号などを掲示する。
 (3) 応急手当や救命処置(心肺蘇生とAEDの使用)等に関する講習を行うなど、実際の対応ができるようにしておくことが必要になる。

救命で必要なのは、いかに早く体温を下げるか
 学校の体育・スポーツ活動中に具合が悪くなった子どもが出た場合には、すぐに活動を中止し、風通しのよい日陰やクーラーが効いている室内に避難させなければならない。次に、水分を摂取できる状態であれば、冷やした水分と塩分を補給させる。その際の飲料としては、水分と塩分を適切に補給できる経口補水液やスポーツドリンクなどが適している。
 ただし、水を飲むことができない、症状が重い、休んでも回復しない場合には、病院での治療が必要になる。また、応答が鈍い、言動が支離滅裂など重症の熱中症が疑われるような症状がみられる場合には、直ちに医療機関に連絡するとともに、現場でなるべく早く体を冷やし、体温を下げることが重要となる。
 このような意識障害が疑われる重症者を救命できるかどうかは、いかに早く体温を下げることができるかにかかっている。具体的には、30分以内に体温を40度以下に下げることが必要になることから、それには「氷水浴・冷水浴法」によって全身を素早く冷却する方法が最も推奨されている。
 すでに競技大会やスポーツ強豪校などでは冷水浴用のバスタブを用意しているところも多くなっているが、一般の学校では水道につないだホースで全身に水を浴びせ続ける方法が有効といえる。また、それも難しい場合は冷房の効いた保健室等に収容し、氷水で濡らしたタオルをたくさん用意して全身に当て、次々に取り換えていく方法がある。いずれの方法においても、直腸温が39・5度以下になるまで、あるいは声をかけ続けて意識が戻るまで続けることが大切になる。
 また、こうした身体の冷却を迅速に行うためにも、校内に業務用製氷機や冷蔵庫を設置し、いつでも氷を供給できる体制を整えておくことも重要な対策になる。

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