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すきまから見る「不登校」への思いこみをほぐす

12面記事

書評

林 千恵子 著
適応指導教室20年超の体験から

 「またゲームばっかりやってたの?」「先生も俺が楽しいだけでゲームをやっていると思ってるのか。ゲームでもしてなければ、みじめでみじめでやってられないんだ!」
 本書は、20年以上に及び適応指導教室「あおぞら」で、延べ800人を超える不登校の子どもたちと共に涙しながら活動してきた著者の体験の書である。そこで生活した子どもたちが自分自身の「不登校の意味と目的」を見つけ、本来の自分を取り戻していく姿が、A君、Bさん等それぞれの作文を通して紛れもない事実として描かれている。
 文科省の令和5年2月の「不登校に関する基礎資料」によれば、令和3年度の全国の小・中学校における不登校児童・生徒数は24万人を超え過去最多、そのうち専門機関等の相談・指導等を受けているのは63・7%にとどまっており、不登校への支援は喫緊の課題である。そして、これを解決するため、大人たちは、不登校への思い込みをほぐし、子どもへの向き合い方を学ぶ必要がある。学校や教育の「すきま」で大切なものを見つけ、そこで蓄えられたエネルギーで新しい世界に向き合う子どもたち。「すきま」の可能性は無限大だと著者は言う。「不登校の子どもが歩き出していくための三つのツボ」「ひまそうな大人作戦」等、子どもたちに関わるヒントがあふれる良書である。
(1760円 東洋館出版社)
(重森 栄理・広島県教育委員会 乳幼児教育・生涯学習担当部長(兼)参与)

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