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インクルーシブ教育のかたち 都道府県ごとの特別支援教育の違いから

12面記事

書評

柴垣 登 著
日本で実現可能な道を求めて

「障害の有無にかかわらず、すべての子どもは地域の小・中学校に就学し、かつ通常の学級に在籍すること」。内閣府に設置した「障がい者制度改革推進会議」がインクルーシブ教育への転換を提案したのは政権交代した民主党(当時)時代、平成22年のこと。
 これを受け中央教育審議会初等中等教育分科会に設置した「特別支援教育の在り方に関する特別委員会」は「インクルーシブ教育システムの構築」を提案。先の推進会議の方向とは異なり、特別支援教育制度路線を貫くもので、それが現在へと至っている。
 本書は両者の議事録を読み込み、「就学先決定」や「財政」についての議論を通して「日本的インクルーシブ教育」の特質、課題から論を起こす。本書中繰り返されるように、双方の考え方を二分法で捉えるのではない。特別支援教育の現状にまず目を向け、「本人・保護者」や学校関係者の声を拾い上げ、「日本におけるインクルーシブ教育の実現の方向」を探ろうというのが著者の主張である。
 特別支援教育支援員の活用状況、特別支援学校費、特別支援教育対象率などの各都道府県の数値をはじき出し、なぜ地域により「差異」が生じるのか、その背景にあるのは何かなどを分析していく。著者が各県の資料を基に作成する課題や方針の一覧などを読むと、「インクルーシブ教育システム」を構築するためのそれぞれの自治体の苦悩に突き当たる。
(3960円 春風社)
(矢)

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