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小学校・中学校・高等学校を見通した 12年間の「文学」の学び

14面記事

書評

千田 洋幸・木下 ひさし 監修
笹平 真之介・渡邉 裕・今村 行 編
東京学芸大学国語教育学会 著
自己を問い、自ら考え発信する授業へ

 「学校段階等間の接続」を明記する学習指導要領実施を機に、小学校から高校までの12年間を見通した「文学」の授業の在り方を追究した。その際、学習指導要領から文学的な文章の指導事項を抜き出し「横軸を学年(発達段階)、縦軸を学習過程」に「読むこと12年間の系統表」を作成。この学習過程に焦点を当て、異校種の教員チームが実践し、指導のつながりを検証、研究した点に特色がある。 実践編へといざなう用語編にはレトリック、描写など10の重要用語と、例えば「構造と内容の把握」であれば「視点」「時制」などのように、それぞれの学習過程に関連させて24の用語を網羅した。
 実践編は研究の成果もさることながら、授業づくりのアイデアにあふれる。「夏の葬列」を読んで中学生自身が日記、手紙、詩などの形式を選択して「もう一つの物語」を書いてみる(登場人物)。小学1年生が「おむすびころりん」を自分なりの解釈を込めて音読を工夫する(解釈の多様性)。
 多くの実践が心情を含め内容理解、解釈に軸足を置きがちな指導から一歩踏み込み、読み手自身が自己を問い、考えを発信していくことを大事にしていることに気付かされる。
 高校段階でも自ら考え、自分の言葉で発信する必要性が求められている。本書の問題提起は、文学作品を読むという学びの意義を再認識する契機となるのではないか。
(2200円 東洋館出版社)
(矢)

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