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企業から学ぶサステナビリティー社会~変化の激しい社会で未来を切り開く人材の育成を~

12面記事

企画特集

 地球温暖化など環境問題が深刻化する中で、経済活動を維持しつつ、持続可能な社会を構築していくためにはどうすればいいのか―。21世紀を担う子どもたちには、今からそうした課題に向き合い、自ら主体的に行動できる力を身に付けることが求められている。ここでは、その視点として重要となる実社会のサステナビリティー活動から学ぶ、環境・エネルギー教育を取り上げる。

持続可能な社会の構築に向けて行動できる人材育成を

 現在、温暖化や自然破壊など地球環境の悪化が深刻化し、環境問題への対応が人類の生存と繁栄にとって重要な課題となっている。豊かな自然環境を守り、私たちの子孫に引き継いでいくためには、エネルギーの効率的な利用など環境への負荷が少ない持続可能な社会を構築することが大切になる。そのためにも、21世紀を担う子どもたちが環境保護と生活利便性の両立について考え、選択する力を育むための「環境・エネルギー教育」がより一層必要性を増しているのだ。
 しかし、こうした環境保全への取り組みは実社会の経済活動と切り離せないため、学校がSDGs教育のテーマとして取り組む上では、実際に社会やビジネスの最前線でサステナビリティー活動に取り組んでいる企業から学び、または課題を見出し、「自分たちができること」へと考えを深めることが重要となっている。
 そして、こうした深い学びや自己の変容を起こす指導法として期待されているのが、自ら課題を設定し解決する「探究的な学習」や、教科横断型の学びを取り入れた「STEAM教育」だ。

自己の生き方を問うための「探究」に
 「探究的な学習」とは、自分で問いや課題を設定し、情報を集め、整理・分析し、他者と話しあい、協働しながら、独自の答えを探す学習活動だ。学校教育ではこれまでも「総合的な学習の時間」等で、こうした過程(プロセス)を通した指導法を取り入れてきた経緯がある。その上で、今日いわれる探究的な学習とは、他教科の見方・考え方を結びつけて総合的に活用することや、実社会・実生活の課題を探究して自己の生き方を問い続けるといった、一歩進んだ展開が望まれているのが特徴になる。
 こうした背景には、将来予測が困難な時代を迎えている中で、自ら課題を見つけ、解決に取り組める人材が社会でより必要になっているからにほかならない。それゆえ、昨年度に改訂された高等学校の新学習指導要領では、「生徒が未来社会を切り開くための資質や能力を確実に育成する」ことを基本方針に、「総合的な探究の時間」を筆頭に「探究」と付いた科目が7つも設置されるなど、自ら探究する点により重きを置いたカリキュラムになっている。

実社会で活かせるスキルを身に付ける
 一方、AIやIoTなどの急速な技術の進展により、社会とテクノロジーの関係がますます密接になっていくこれからの時代において、近年になって注目を浴びている指導法が「STEAM教育」だ。これは、一般的な教育方法とは異なり、科学や技術、ものづくり、芸術、数学などの理数系と芸術系分野を重視する教育法となる。
 具体的には、各教科での学習を実社会での問題発見・解決に活かしていくための探究力や創造力を育成することを目指しており、プログラミングなどICTを活用するスキルもその1つになる。すなわち、子どもを今後の社会に順応した競争力のある人材に育てていくための教育的なアプローチといえる。
 いずれにしても、これからの学校教育には、実社会で活躍するための専門的な知識や新しい価値を創造できる人材を育成することが、以前に増して求められるようになっている。そのためにも学校には、産業界や地域の団体等と連携し、各学校と外部の⼈材やコンテンツ等のリソースのマッチングを通じて社会に開かれた教育課程を実現していくことが必要になっているのだ。

環境保護と生活利便性の両立を考える時代
 こうした実社会・実生活の中から課題を見つけ、自己の行動へとつなげる学びに適しているのが、「環境・エネルギー教育」といえる。なぜなら、エネルギー源を海外からの輸入に依存している日本では、常にエネルギーの安定供給と環境負荷の低減が課題になっているからにほかならないからだ。
 特に、昨年の3月22日には初めて電力需給ひっ迫警報が発令され、夏にかけてはロシアのウクライナ侵攻によってエネルギーの安定供給が危ぶまれる事態に陥っている。その中では、エアコンの使用を控えたことで熱中症事故が相次ぎ、電気代の高騰による生活不安も増している。しかも、いつまた地震などの自然災害によって大規模停電が起きても不思議ではない。
 一方で環境負荷対策としては、太陽光発電などの自然エネルギー利用や、電気自動車へのシフトが推進されており、2050年までのカーボンニュートラルの実現に向けた温室効果ガスの排出を抑制する政策も年々強化されている状況がある。すなわち、個人においても環境保護と生活利便性の両立を図りながら、考え、選択していくことの重要性が問われるようになっているのだ。
 このような答えを探す時代を迎える中で、将来そうした決断に立ち会う子どもたちが、今から環境やエネルギー問題について考えることには大きな意義がある。加えて、エネルギー問題は、地球の温暖化に与える影響だけでなく、経済成長、産業、健康、貧困など、SDGsの多くの目標について考えるテーマになるため、学校教育においても取り組みやすいといった背景もある。

SDGsへの貢献が社会信用の獲得やビジネスチャンスに
 さらに現在、民間企業においては、環境負荷の低減に貢献することが社会や仕事での信用を高め、生存戦略となる時代を迎えている。つまり、SDGsへの対応がビジネスにおける取引条件になったり、多様性に富んだ人材確保につながったり、新たな事業を創出する機会になっているのだ。
 中でもSDGs教育が重視される学校現場を支援することは、最も身近な社会への貢献になり、地域への信頼性の獲得など企業イメージの向上に直結する。したがって、出前授業、体験プログラム・教材の提供などを通じて、積極的に関わりを持つ企業が多くなっていることも、環境・エネルギー教育を推進する学校にとっては大きなサポートとなっている。
 子どもたちが実社会・実生活を見据え、エネルギー問題の解決を探ろうとする中で、企業のサステナビリティー活動は、いわば“生きた教材”となって活用できるものといえる。
 再生可能エネルギーの利用によるCO2削減や環境性能の高い商品の開発、脱プラスチック、循環型リサイクルや再資源化、食品ロス削減、自然保護活動など、企業における環境問題への取り組みを知ること。そして、それを自身のエネルギー利用や選択に取り入れ、「自分たちができること」へと変えていく力を育んでいくことを期待したい。

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