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一刀両断 実践者の視点から【第334回】

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変わらぬ「大学教授の意識」

 連続テレビドラマの「らんまん」で学歴の無さを大学教授に「虫けら」と切り捨てられたセリフが話題になっている。
 酷い差別だと皆が感じるだろうと思われるが、そのような意識は今の日本には本当にないのだろうか。
 教員養成に関する全国規模の会合で、会長が「実践ばかり意識していると、本来の研究者としてのレベルが下がってしまう。研究者である事を忘れてはいけない」と話された。明らかに研究者が上で実践者は下なんだと強調されていた事を思い出す。この意識は今も厳然と根を張っているのではないだろうか。
 特に教育学部系はやってみせる示範はなく学校の教壇に立った事もない頭だけの教員が多い。最近は実務家教員をと文科は示しているが、文書実績をハードルにする為に本を出すとか論文を書くとかして実践力は評価できない輩と校長会長や研究部会長などの役付を実務家教員として入れている。
 研究者のプライドと役職者のプライドを持つ者ばかりが教育学部や教職課程にたむろする事になってしまうのではないだろうか。こうした文書実績の基準を設けているのは文科省であり、相矛盾した事をやり続けている。
 たまたまそうした環境に居なくとも優秀人財は多く存在しているが、虫けら扱いする輩は今も様々なところに存在している。たくさんの万太郎が存在しているはずである。
 私が勤務する麗澤大学そしてモラロジー道徳教育財団の学祖廣池千九郎(1866-1938)は、学歴は万太郎(牧野富太郎1862-1957)同様の小学校しか出ていないが、東京大学からの法学博士を授与されている。こうした人物を見つけて認めていく動きがあった事を聞かされて誇らしく感じる反面、最近は耳にしないのは何故だろうか。
(おおくぼ・としき 千葉県内で公立小学校の教諭、教頭、校長を経て定年退職。再任用で新任校長育成担当。元千葉県教委任用室長、元主席指導主事)

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