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Intel Connection 2023開催~DXを活用した人材育成のノウハウ、教育の現場でのDXの事例を多数紹介~

18面記事

企画特集

鈴木社長(中央)の質問に答える栗山監督(右)

 「技術とビジネスをつないで新しいことを始めよう」―。インテル株式会社は6月19日・20日の2日間、「Intel Connection 2023」を東京ミッドタウンホール(東京・港区)で開催した。本イベントは企業間の連携を強めてDcXをさらに推進することを目的としたもの。ここでは、テクノロジーが開く、日本の次世代育成をテーマにした講演を取り上げる。

野球界にも起きているDX変革の波

自分で何かを学んでつかむことが大事
 初日の基調講演では、2023WBC日本代表監督の栗山英樹氏とインテルの鈴木国正代表取締役社長が、世界に通用する人材を育てるために必要なことは何かを議論した。
 最初に栗山氏の言葉をテキストマイニング風に分析した結果を掲示。その中で強調されている「人間力」について、鈴木社長は人材育成の観点から尋ねた。「日本代表の監督をするにあたり、“どれだけ勝ちたいか”という思いを、掛け算的に高めていけるチームにしたいと考えました。というのも、日本ハムでの監督時代の経験から、いくらこちらが努力しても選手が変わるのは、自力でスイッチを入れたときであり、自分で何かを学んでつかみ取ることが、技術や能力よりも大事だと思っていたからです」と栗山氏。つまり、指導する立場としては、選手とコミュニケーションを重ねて、自力でスイッチを入れられる環境を整えることが大切と語った。
 これを受けて鈴木社長は「日本の企業と違って外資系の会社は1対1でよく会議をする。それが個人的な話ができるチャンスにつながるからです」と指摘。栗山氏も「1対1じゃないと相手に言いたいことが伝わりません。例えば、選手に向けた何気ない声かけ一つで緊張感が緩んでしまうことがあり、監督室に呼んで直に話すようにしていました」と同意した。

デジタル知識の底上げを―鈴木社長
選手を信じて送り出す―栗山氏

 続いて、最近は少年野球でもデータ利用が盛んになっている話題に触れると、「実は今回の日本代表チームを通し、将来の野球界に向けて投げかけたいことの1つにデータ利用がありました」と打ち明ける。その上で、今大会では叶わなかったが、今や多くの選手がデータを利用する時代になっていると語った。
 「環境が整えば、データをスキルや戦術に生かす土壌はできているんですね。企業のDXも、CEOや事業部長の理解が得られずにストップしていることが多い。文化醸成でデジタルの知識を底上げし、トップダウンをしっかりやらないと改革はできません」と鈴木社長。「確かに10年前は想像できませんでしたが、今はデータを駆使することで、球速が150キロを超える投手がどんどん現れています」と栗山氏は野球界にもDXによる変革が起きていることを挙げた。
 次に、鈴木社長が「もし10年前に戻れるとしたら、何をしたいと思いますか」と投げかけると、もう一度ユニフォームを着たいと即答。「日本ハムの監督時代に200人近い選手をドラフトで獲りましたが、4分の3は活躍させてあげることができませんでした。今の経験を持っていたら、もっと大胆に、思い切って選手を使ってあげることができたのでは」と理由を語る。
 最後に会場からの「新人のモチベーションを引き出すには?」という質問には、「僕は選手を使うときは絶対にやってくれると信じて送り出す。なぜなら、みんながダメだといっている選手でも劇的に変わる瞬間があるからです。だからこそ、若い選手には今を嘆かずに、いつかできるようにしようと指導してきました」とメッセージを送った。

企業と連携し、変化する社会の動きを教室に
 教育をテーマにした分科会では、埼玉県戸田市教育委員会の戸ヶ崎勤教育長が登壇。「令和の日本型学校教育実現に向けた挑戦」と題し、2015年に就任以降、教育にEBPM(エビデンスに基づく施策立案)を積極的に取り入れ、AIを活用できる能力を育成する教育改革を進めてきた思いを披露した。
 その中で、戸田市がこれまで100社を超える企業と連携してきた理由については、「変化する社会の動きを教室に取り込むため」と説明。Society5・0時代の新しい教育を展開するためには、自前主義を通してきた学校現場の意識を変える必要があったと振り返る。
 また、子どもの多様性を生かすためには、一人一人のよさを徹底的に伸ばす教育が必要と指摘。当初から教員研修プログラム等で提携しているインテル社には、高度で最先端な学びが実現できる次世代のメディアルーム「STEAM Lab」の新設にも力を借りていると紹介した。
 さらに、現在力を入れているのは、授業、生徒指導、学級・学校経営を「科学する」ことと挙げ、例えばベテラン教員の指導技術や不登校児の早期発見、学校経営の自己・他者評価などをデータ化し、どの学校でもルーブリック(学習到達状況を評価するための基準表)に基づいて活用していけるようにしていきたいと抱負を述べた。その上で、早くから1人1台端末を整備してきた自治体は端末の更新時期を迎えていると指摘。「国が責任を持ち、GIGAスクール構想のセカンドステージに向けた検討を進めてほしい」と要望した。


戸田市の教育改革について講演する戸ヶ崎勤教育長

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