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現代学校改革の原理と計画のために

18面記事

書評

宮盛 邦友 著
アンチ新自由主義の公教育論

 本書は、今日の新自由主義的な教育改革に対抗できる公教育論として著者が提唱する「人格=認識形成学校」論を具体的に文章と資料で提示した「テキスト」だという。
 この人格=認識形成学校とは「教養と指導を要として総合学習を軸とする、学習活動と自治的諸活動を組織化した総合的な現代学校」であると定義する著者の概念を共有するのは容易ではない。
 そこで、第1部(原理編)では、「第三の教育法関係」として裁判官の公教育観や子どもの権利の位置付けを検討する作業が人格=認識形成学校の再構築につながると著者は促し、他方で、「子ども・人間の人格・認識の発達に関する国家的ないとなみ」である教育政策の文書として学習指導要領を批判的に分析する。
 第2部(計画編)では、子ども、教職員、保護者、住民が対等・平等に参加・協議する公共性の中で、開かれた「教職の専門性」を問い直すという浦野東洋一の開かれた学校づくり論を基軸に据え、学校改革、授業改革、教育委員会改革を理論的に再検討している。
 ユニークなのが第3部(開発編)で、精神科医・憲法学者・教育社会学者との対話が提示され、人間発達援助実践から教師による教育実践を捉え返すことを試みたという展望編はオーソドックスな教科書イメージを覆し、著者のワールドを少し垣間見た思いがした。
(2750円 学文社)
(元兼 正浩・九州大学大学院教授)

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