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教育におけるChatGPTの可能性 メリットとリスクを見極めながら学習へとつなげる

12面記事

ICT教育特集

登本 洋子 国立大学法人東京学芸大学先端教育人材育成推進機構准教授、博士(情報科学)

 文部科学省は、7月4日に「初等中等教育段階における生成AIの利用に関する暫定的なガイドライン」を発表した。これから教育現場で活用の場が広がることが予想される「ChatGPT」などの人口知能(AI)のとの向き合い方について、東京学芸大学准教授の登本洋子氏に聞いた。

「ChatGPT」を使ったことがない教員 80・7%
 私たちの研究チームで、6月中旬に、小学校、中学校、高等学校の1015名の教員を対象にしたChatGPTに関する調査を行いました。調査結果の一部をご紹介すると、ChatGPTについて「よく知っている」「知っている」という教員は38・1%。また、ChatGPTを既に使ったことがあると回答した教員は19・3%で、これらの結果は、私たちの予想よりも、やや低いものでした。

学習での活用と課題
 AIの急速な進化は、私たちの生活に大きな影響を与えようとしています。学校教育も例外ではありません。学習におけるAIの活用は、児童生徒一人一人に合わせた教育を可能にしていきます。ChatGPTを使うと、思考を深めるときや英語などの言語学習の対話相手になってくれたり、プログラミング学習を助けてくれたりします。
 一方、こうしたAIの活用は、セキュリティーやプライバシー、著作権や倫理的問題、悪用といったリスクも内包しています。学習で用いる際にも、どのようにルールを定めて有効活用していくのか、技術が更新されるたびに議論が必要になるでしょう。

ルールよりも技術が先行する時代
 だからといって、使用を禁止するという時代では既にありません。対話型AIの最新版「GPT―4」は、国家試験に「合格」したという例も報告されているようです。知識の習得よりも、知識を何に、どのように用いるかがより問われる社会では、こうした技術を活用する力は欠かせないものになります。
 また、ChatGPTの登場により、ルールの策定よりも技術が先行する時代が到来したとも言えます。今後、どのように活用していくか、先生方にこそ積極的に使ってみてもらい、議論に参加してほしいと思います。どのようなことを尋ねると、どのように回答してくれるのか、どのようなことが得意で、どのようなことが苦手なのか、AIの世界にぜひ一歩踏み出してみてください。
 AIを使うと、人間の能力が伸びなくなってしまうという懸念があるかもしれません。しかし、使ってみると、どのように尋ねるかの言語能力がこれまでよりも求められることもすぐにお気づきになるはずです。
 ChatGPTに代表される生成系AIは、携帯電話で言えば大きくて重たく肩から下げて使っていた頃に当たる黎明期でもあります。教育での活用の議論も始まったばかりです。黎明期の技術に立ち会える貴重な機会を逃さず、メリットとリスクを見極めながら、豊かな未来のための学習につなげていきたいものです。

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