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一刀両断 実践者の視点から【第347回】

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安全のための予算

 《市教委「ガイドライン徹底不十分」 熱中症疑いの中学生死亡 山形》(時事通信社)という見出しの記事は様々なリスクを示唆している。今回の事案は部活を終えて帰宅する途中で起きている。担当から「無事に帰宅させられなくて」と耳に残るコメントがあった。
 帰路についての責任が学校に問われる事を再認識させるものとなった。確かに日本スポーツ振興センターの災害共済給付では、登下校でも明らかな瑕疵があった場合は保証の対象とされている。
 今回の場合はどのように判断されたのかを確認しておく必要がある。こうした事案は世界でも日本のみかもしれない。何故なら門の外は学校の責任ではないとするのが大半の国地域の判断であり常識となっているからである。
 下校中に行方不明になると学校職員は招集されて探し回る。こうした勤務が当たり前とされている。夜中を回る頃、親戚の家に居たと分かり職員は解散する。
 友人の校長が障害のある児童を引率して遠足に行き、電車で児童を見失い、捜索願いを出して捜し、翌日遠方の駅で保護された。その責任を取らされて校長1年で市の組織に出され、10年ほど干された。これは本当に校長の責任なのだろうか。
 安全のために使える予算が確保されて居たら人を配置したり、指導も丁寧にされるだろうから、今回のような過失も激減する。
 お金が無いためにやりくりする学校安全の不備はそのほとんどが、人的な余裕がないところから起きているのではないだろうか。亡くなった生徒の死は担当の確認のみでなく、システムからして防げたのではないだろうか。
(おおくぼ・としき 千葉県内で公立小学校の教諭、教頭、校長を経て定年退職。再任用で新任校長育成担当。元千葉県教委任用室長、元主席指導主事)

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