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一刀両断 実践者の視点から【第360回】  

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教諭への賠償請求と首長の役割
 
 《「ブラックすぎる」川崎市長、小学校プール水出しっぱなしで教諭へ賠償請求に批判集中「川崎で先生になるのはやめたほうが」》(SmartFLASH)という見出しの記事が出た。やや論点に無理があるが、市長の判断とする前に教育長や教委がそのように進言したからではないのだろうか。仮に市長の意向があったとしてもそれを踏み留めて再考させるのが教育長や教育委員ではないのだろうか。
 そのような振る舞いを理由に職を失いかねないので、やむ無く見過ごしたとなると何ら機能を果たしていない事になる。また、市長を推薦した政党や市民も同類となるわけだから、確かに報われない可能性は否定できない。
 ここでのポイントは、プールへの注水は教員の業務なのかという事である。私は体育主任の頃、近隣に迷惑を掛けないようにと夜中に出向いて車の中で徹夜して水を張った事があった。その日に出張もあり、ボーとしていて同僚の車にぶつけてしまった事があった。こうした仕事は教師が自己責任でやっているのである。このおかしさをおかしいと思えない様にしている体質が蔓延しているし、法的にも制度的にもほとんどが教師の善意に依存している。ブラックの根源なのではないだろうか。
 本来、そうした教師の労を配慮して支援するのが首長の才覚であってほしいが、選挙の前とは異なって、事が起きると手のひら返しになるのはこの市だけではないだろう。
(おおくぼ・としき 千葉県内で公立小学校の教諭、教頭、校長を経て定年退職。再任用で新任校長育成担当。元千葉県教委任用室長、元主席指導主事)

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