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ハレの日を祝う記念品選び

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企画特集

 今年の「卒業記念品」は何にしよう―。9月に入ると、学校での卒業記念品選びがいよいよ本格化し、頭を悩ます教員やPTAが多い。ハレの日を祝うために共通するのは、限られた予算の中でも、「誰もがもらってうれしい」アイテムを贈ってあげたいという思いである。そこで、選定時期を迎えた学校現場に向けて、今の時代にふさわしい卒業記念品を紹介する。

学校から卒業生へ、卒業生から学校へ、それぞれの思いを込めて

過渡期を迎えている卒業記念品
 学校から卒業生に贈る「卒業記念品」は、それがどんなに些細なものでも、その場所で多くの仲間たちと過ごした時間を思い起こさせるものだ。最初に手にしたときよりも、むしろ後になって意味深く感じるものといえる。だからこそ、贈る側の学校は、今年はどんなものを贈ろうかと頭を悩ませている。
 しかし、生活スタイルの変化や少子化が進む時代に伴い、そんな「卒業記念品」に対する学校としての捉え方や保護者の価値観も多様化し、一括りにはいかなくなっている。その中では、「PTAの意見が割れて選定するのに多くの時間がかかった」「PTAに加入していない保護者の子どもには記念品が贈られなかった」といった問題も起きている。また、小中学校における卒業生に贈る記念品の単価は千円~4千円程度と絞られる中で、当たり障りのない記念品を贈るよりも「卒業アルバムに一本化した方がいい」といった声も聞かれている。

部活・サークル単位で作成する新しい需要も
 一方で、インターネット通販の拡大によって商品選びの選択肢が広がっているとともに、デジタル印刷技術の進化により、小ロットでも低価格で名入れ加工ができるなどノベルティ自体の魅力はアップしている。しかも、環境負荷の低いインクやフィルムなどを使用する、廃棄物の削減やリサイクルも可能といった高品質化への取り組みも進んでいる。こうした中で、野球やサッカー、演劇、吹奏楽など、部活・サークル単位でノベルティを作ったり、学級ごとに独自の記念品を用意したりする「新しい卒業記念品」の需要も年々高まっているのも事実だ。
 また、ここ数年は新型コロナウイルスの蔓延によって日常活動が制限されたり、満足に学校行事を行えなかったりしたこともあり、「せめて記念品だけは大切な思い出となるようなものを選んであげたい」と予算を上乗せしたり、選定に時間をかけたりした学校も多くあった。
 ただし、ノベルティの納期自体は年々短縮化されているものの、人気のあるアイテムは在庫不足になりがち。せっかく良い品を選んだと思ったのに、いざ注文しようとしたら売り切れだったとならないためにも、遅くとも年内には発注しておくことをおすすめする。

定番の名入れ商品に加え、エコや防災用品も人気
 学校が贈る卒業記念品の代表的な例としては、小学校では千円以内に収まる名入れのボールペンやキーホルダー、水筒・マグボトル、多機能置時計、缶バッジ、デスクグッズが相変わらず人気だ。これに、中学校では本革パスケースやUSBメモリ、オリジナルTシャツ、和英・英和辞典などが加わるとともに、スマートフォンの所有が当たり前になり、学校でもタブレットが導入されたことも伴って、軽量&コンパクトなモバイルバッテリーや充電機能付きスマホスタンドを選択する学校も多くなっている。
 高校では価格帯も上がるため、高級ボールペンや革財布、金封ふくさなど実用的で長く使えるものが好まれているが、成年年齢の引き下げによって署名捺印するケースが増えることから、名入れサービスのある印鑑・印鑑ケースも再び注目されている。
 なお、一部の私立高校では自分で好きな商品が選べるカタログギフトやブランド物の筆記用具はもちろん、腕時計やコスメ、アクセサリー類なども候補に挙がっているようだ。
 また、SDGs教育など持続可能な社会の実現への関心を受けて、エコバックやステンレスボトル、土に還るバンブー素材のマグカップ・ステーショナリー、間伐材や廃材を使った木製時計やフォトフレーム、海洋プラスチックゴミを再利用したスマホスタンドなど、エコや環境を意識した商品を選択する傾向も高まっている。
 あわせて、近年ではLEDライト、ランタン、手動&ソーラーラジオ、非常用持出袋、救急セットといった防災用品を選択する学校も多いほか、熱中症予防としての携帯ファンやクールマフラー、折りたたみ日傘、コロナ禍に配慮した各種抗菌・衛生グッズなども人気となっている。

センスの良いアイテムを選ぶ工夫も大切
 卒業生に送る記念品でもっとも重要になるのは、今の時代に合ったセンスの良いアイテムを選ぶ目になる。予算が少ないから仕方ないと大人が力を入れずに選んでしまうと、子どもたちのせっかくの思い出が色あせてしまう。例えば、いくつか候補を挙げて生徒会で検討してもらうことや、今のGIGAスクール構想下の環境ならクラウド上で投票してもらうなど、子どもの意見を取り入れる方法を検討してみたらどうか。
 また、学校名や校章、卒業年月日などの名入れ加工の内容にこだわる、学年色や学校カラーなど意味を持たせてあげるなど、学校としてのオリジナリティーをできる範囲で取り入れることも、子どもたちの思い出を刻む大切なひと手間といえるだろう。

学校への寄贈品はより実用性のあるものへ
 PTA(卒業生)から学校に寄贈する記念品の予算は、学校規模により10~30万円程度となっている。以前の定番といえば、記念樹やレリーフ、式典・行事商品だったが、近年では学習内容の多様化もあって、学校で足りていない備品や在校生の学びに活かせるものなど、より実用性にシフトした商品が選ばれる傾向にある。
 ICT機器では、電子黒板や長尺印刷機、プロジェクター、複合機、デジタル顕微鏡、オシロスコープといった日常の授業で活用できる機器が主流になるが、今後はセンシング(画像認識や音声認識)、メタバース・AR(拡張現実)、VR(仮想現実)、AI(人工知能)、3Dプリンターなど、最先端技術や教育データの効果的な利活用を推進するための実証を行う装置も候補に挙がってくるだろう。
 また、1人1台端末を使ったアクティブ・ラーニングが志向される中では、多様な学習スタイルに応えるワークテーブルや椅子、ホワイトボード、パーテーション、タブレット充電保管庫、天板拡張器具といった需要も高まっている。そのほか、月行事予定板や裁断機、スクリーンボードなど学校現場での使用頻度が高い備品、薬品庫、キャビネット、展示ケースなどの収納用品も根強いニーズとなっている。

避難所生活の改善や熱中症対策として
 一方、災害時に地域の避難所となる学校施設では、防災機能を強化することが求められている。近年では大規模地震だけでなく、集中豪雨での河川の氾濫によって避難所を開設する機会が増えており、その分、避難者が生活する上での施設の脆弱さが浮き彫りになっているからだ。
 したがって、学校行事でも使用できる大型テントや赤外線ヒーター、ジェットヒーターなどの暖房機、自家発電機、ポータブル蓄電池、無線LAN装置、防災無線、段ボールベッド、間仕切り、災害用毛布、ヘルメット、太陽光発電型外灯、止水版に加え、熱中症対策としても使える大型扇風機、気化式冷風機、スポットクーラー、冷水機、熱中症計、熱中症危険度表示パネルなどを寄贈するケースが増えている。 とりわけ、運動部活動が盛んな私立学校では、業務用製氷機やアイスバスといった迅速な救命につながる機材を卒業記念品に充当するところも。
 さらに、コロナ禍においては感染症の拡大予防となるサーモグラフィーなどの検温装置や、室内の換気に適したサーキュレーター、空気清浄機、加湿器などの寄贈が増えた。 今後も継続的な感染症対策を視野に入れる中で、二酸化炭素濃度計測装置や紫外線照射装置といった新しい衛生機器や、トイレ・手洗い場の自動水栓化なども視野に入ってくることが考えられる。

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