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現場が動きだす大学教育のマネジメントとは 茨城大学「教育の質保証」システム構築の物語

14面記事

書評

太田 寛行・嶌田 敏行 編
「茨城大学コミットメント」プロジェクト 著
「教育のための評価」の基本貫く

 教育の質を比較可能な形で測るべしという社会の要求と、教育の質を評価することの根本的な難しさとの狭間で葛藤しながら、教育データをトップダウン的に活用するのではなく、現場の主体的な動きを導くようにボトムアップ的に活用する教育の質保証システムをつくり上げてきた茨城大学の記録である。
 同大学の教育マネジメントの肝は、データはあくまでも議論や行動の指針を立てる材料にすぎず、そのデータをどう使いこなすかは現場に任せ干渉しないという姿勢の貫徹だ。根本には「教育は自由でなければ面白くない」というマインドが生きている。
 ディプロマ・ポリシー(DP)に基づきカリキュラムを組んでいるのだから、DPの達成度を測らなくては教育評価の意味がないという主張は筋が通っている。そして、成果・能力の可視化、評価は学生自身に直接問うべきで、それにより意識や行動がさらにエンパワーされるのだから、主観的な評価でよいと割り切る。教育のための評価という考えが一貫している。その結果、学生・教職員が日本で最もDPを意識している大学になった。
 同大学の場合は「走りながら一緒につくる」やり方が功を奏した。おそらく違う考え方もあるだろうが、どんなやり方を取るにせよ、「教育は自由でなければ面白くない」という根本は動かしたくないものだ。
(2640円 技術評論社)
(浅田 和伸・長崎県立大学学長)

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