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工学の視点で社会課題を解決する人材を育てる

12面記事

ICT教育特集

数学の授業で人体基準での計測を実際に体験

芝浦工業大学附属中学校

 芝浦工業大学附属中学校は、理工系のスペシャリストを育成するために科学技術への興味関心を高め、理系の基礎学力や思考力、国際性や粘り強さといった理工系資質を伸ばすべくSTEAM教育を中高一貫で実践している。今回、「ショートテックアワー」など、同校のSTEAM教育の取り組みについて、教頭の斎藤貢市氏にその内容などについて話を聞いた。

あらゆるところに潜むテクノロジーを見つける
 「ショートテックアワー」は、子どもの理系離れが社会問題として浮上していた2012年に同校が考案した、全教科の授業の中に工学を取り入れる取り組みだ。
 斎藤教頭の国語授業では、「出雲大社の高層建築」を題材に授業を実施。「古事記」に登場した数十mもあったと言われる高層建築「出雲大社」を昔の人は一体どうやって建てたのか、建築上の欠点から何度も倒壊したがどのように克服したのか。さらに進んで古代からの巨大建築の一つ「五重塔」の心柱の秘密を探ることからスカイツリーの建築技術につなげるといった内容で実施した。
 「『ショートテックアワー』は、1年間で各教科1時間程度、全教科で年間十数時間で実施しますが、生徒はこの授業をとても楽しみにしています。自分が考えていたことと工学がつながる体験は印象深く、学びたい学問と結びつけ、将来を考えるきっかけになることも少なくないです」と斎藤教頭は話す。

テクノロジーを通して社会問題を解決する
 同校は、他の取り組みとして、「SHIBAURA探究」を行っている。「SHIBAURA探究」は、理工系の知識で社会課題の解決を考える総合的な探究型の授業で、イノベーション力のあるグローバルな人材を育てるSTEAM教育だ。
 ドローンやAR体験など楽しいカリキュラムも入れながら、3年間を通してプログラミング技法、3DCADなどの技術やデータサイエンスといった専門的な授業を実施する。学年末には、地域の理工系企業と連携して会社の課題を解決するための授業を行い、社会と結びつきながら常に新しく塗り替えられていく工学を実感していく。
 さらに、地元豊洲の課題を見つけたり、長野やアメリカでの宿泊体験を通して目指したい社会に向けて問いを立て、自分ができることを考えたりするなど、グローバルな視点で長期的な課題に取り組んでいる。

ICTの活用で学びの幅が広がる
 普段の授業では、Googleドキュメント、ロイロノートなどを日常的に活用しており、「ショートテックアワー」の授業でもICT活用が欠かせない。例えば、中学2年生の数学「令和の伊能忠敬になってみよう」では、200年前と同じ方法、人体基準の計測で地図作りを体験。その後、ICTを活用しGoogle Earthなどの人工衛星のデータで正確な地図を確認する。当時の地図の誤差の少なさからテクノロジーのすごさを実感する具合だ。
 斎藤教頭は、「幼少期からデジタルに接してきた生徒はICTレベルが高く、教員が逆に助けてもらう場面があるほどです。すでに生徒は自分自身で知識を得る力を身に付けていると言えます。これからの教員に必要な力は、ただ知識を与えるのではなく、生徒の学習の取りこぼしのないようなシステムを作って子どもの学びを導き、生きる力を育てていく力でしょう」と語った。

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