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「学校施設・設備整備の課題に関する調査」まとめ

11面記事

施設特集

日本教育新聞社

 カーボンニュートラル化を具体的に進める予定の学校は全体の約3割にとどまり、ウェルビーイングに向けた学校づくりへはトイレ等環境衛生設備の推進で過半数が対応―。
 全国の市区町村教育委員会を対象に日本教育新聞社が「学校施設・設備整備の課題に関する調査」を実施したところ、そうした結果が明らかになった。調査は7月下旬、全国1738市区町村教育委員会に用紙を送付。368教委の学校施設・施設整備担当者が回答した。回収率は21・2%。

学校施設のカーボンニュートラル化

 文科省の「学校施設の在り方に関する調査研究協力者会議」は3月、子どもたちや教職員にとっての快適で健康的な温熱環境の確保と脱炭素化の推進に向けた学校施設のZEB化の推進方策などについての報告書をまとめている。
 国として2050(令和32)年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする、カーボンニュートラルの実現を目指すことが示されており、学校施設などの建築物についてZEB基準の水準の省エネルギー性能の確保が求められる。
 ZEBとはNet Zero Energy Building(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)の略称で、快適な室内環境を実現しながら、建物で消費する年間の⼀次エネルギーの収支をゼロにすることを目指した建築物のこと。エネルギー消費量の削減以外のZEBのメリットとして、快適性・生産性の向上、環境教育への活用、防災機能強化、光熱費の削減などが挙げられている。
 そこで、各自治体の学校施設のカーボンニュートラルへの対応について聞いた。現在のところ、「カーボンニュートラル化を具体的に進める予定の学校がある」は113自治体(全体の30・7%)にとどまった。「カーボンニュートラル化を具体的に進める予定の学校がない」は218自治体(同59・2%)。「その他」も30自治体(同9・2%)あった。
 「予定の学校がある」と回答した113自治体には「カーボンニュートラルをどのように進めていくか(今後行うか)」について、選択肢の中から当てはまるものを全て選んでもらった。
 最も多かったのは「省エネルギー型設備(省エネルギー型の照明器具や空調設備を導入する)」で、98自治体が選択した。「太陽光発電(屋上・屋根等に太陽電池を設置して、発電した電力を活用する)」が79自治体で続き、「断熱化(複層ガラスや二重サッシ、断熱材等を使用する)」も59自治体と多かった。
 「日除け(ひさし、ルーバー、バルコニーなどを設ける)」は28自治体、「自然採光(トップライト、ハイサイドライトやライトシェルフを利用し、自然光を取り入れる)」は21自治体あった。

ウェルビーイングに向けた学校施設づくり

 文科省の「学校施設の在り方に関する調査研究協力者会議」に設置された「学校施設の質的改善・向上に関するワーキンググループ」では、ウェルビーイングに向けた学校施設づくりなどが議論されている。
 そこで、ウェルビーイングに向けた学校施設づくりについて、選択肢の中から当てはまるものを全て選んでもらう形で聞いた。
 最も多かったのは「トイレ等環境衛生設備の推進」で、全体の60・0%となる220自治体が選択した。「誰もが健やかに学習・生活できる校舎のバリアフリー化」が同41・8%の154自治体で続いた。
 「1人1台端末を生かした連絡システム整備」は同22・3%の82自治体、「学習空間の整備(開放的で集中できる空間デザインなど)」は同10・1%の37自治体あった。

学校施設における水害対策

 文科省の「学校施設等の防災・減災対策の推進に関する調査研究協力者会議」は5月、学校施設の水害対策の基本的な考え方や検討手順などを示した手引をまとめた。その中で、学校施設のハード面の水害対策について、選択肢の中から当てはまるものを全て選んでもらう形で聞いた。「排水溝の清掃」が全体の32・1%となる118自治体で最も多く、「上階避難の設定」が同16・8%の62自治体で続いた。「受変電設備・備蓄倉庫のかさ上げ」は同9・2%の34自治体だった。

落下・転落可能性場所の対応

 学校の施設または設備が原因と思われる小・中学生の死亡事故について、3月に消費者安全調査委員会から文科省宛てに意見が交付された。それを踏まえ、文科省は転落・落下の可能性のある場所についてレイアウトを変更するなど、速やかな対応をするように各地域に要請した。
 これに関連して、各自治体が取り組む対応について、選択肢の中から当てはまるものを全て選んでもらう形で聞いた。
 「屋上や天窓設置場所など、転落の危険がある場所への施錠」が全体の75・5%の278自治体で最多となり、「屋上や天窓設置場所など、転落の危険がある場所へのフェンス・金網等設置」が同28・5%の105自治体で続いた。「転落可能性がある場所のレイアウト変更」は同8・2%の30自治体にとどまった。

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