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子どもの心のケアの進め方 災害やコロナ禍でも子どもが安心して過ごせるために

16面記事

書評

田中 和代 著
多くの事例交え共感的姿勢を解説

 臨床心理士で教員、スクールカウンセラーなどの経験もある著者が、子どもへの心理的な支援の他、子どもの気持ちを聴くスキル、話の仕方のスキル、簡単にできるリラクゼーションの仕方などを分かりやすく紹介、解説している。
 多くの事例を交え、平易な言葉で書かれているので、基本的な心構えなどをおさらいするのにいいだろう。
 全体を貫くのは、自分の心の苦しみをうまく理解、表現できない子どもに寄り添い、傷ついた心を少しでも軽くしたいという共感的な姿勢だ。
 例えば、「大人の私でさえ、こんなにつらいのだから、子どもはもっと苦しいだろう」と考える。子どもと話すときは、気長に待つ。自分の考えを言えない子どもには、上手な問い掛けをすることで本当の気持ちを引き出す。相手を責めるのではなく「私はこう思うよ」という「アイ・メッセージ」で話す。途中で答えが分かっても、さえぎらず最後まで聴く。なぜなら、子どもが求めているのは、答えではなく、自分の考えを聴いてもらうことかもしれないから。
 これらは、実は子どもに対してだけでなく、相手が大人でも立派に通用する。ただ、普段はなかなかそんなに悠長にしていられないというだけのこと。人と人との接し方は本当はどうあるべきかということを、振り返りながら読むのもいいかもしれない。
(1760円 黎明書房)
(浅田 和伸・長崎県立大学学長)

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