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国語科授業の実践的考究

14面記事

書評

米田 猛 著
実践の洗練、理論化を目指す

 「質のよい沈黙」を教室で実現することが、「思考力の錬磨」に結び付く。これは第一章「話すこと・聞くこと」の授業論の一節。
 5章構成の第一章から四章までは著者の実践に基づく学習者の学習記録とその理論化、実践のために行った「教材研究」「教材分析」、第五章は国語科授業のための基礎論で、コミュニケーション能力、情報能力、実生活での活用を目指す国語力育成のための教科指導の在り方などが収録されている。
 著者は、中学校の国語教室で教職の前半を過ごし、その後は大学で国語科教育学の実践と研究を追究してきた教育学者。本書は、著者の48年の集大成であり、授業実践の洗練化とその実践を支えている理論化は、どうしてもやり遂げなければならない責務として執筆したものである。本書と同時にⅡも出版されている。著者は、教師のどんな働き掛けが子どもたちのどんな反応を引き起こし、それはなぜなのかを解明する点において、教科教育学が「科学」としての「学問性」が担保されるのであるという。本書には、「実践」と「理論」とを架橋する意図が込められている。
 現行の学習指導要領が全面実施されてから、小学校は4年。今こそ、学習者の「ことばの力」の伸張に寄与しなければならない国語科授業のため、必要不可欠な実践理論に向き合う時間を持ちたいものである。
 (4950円 溪水社)
 (伊藤 敏子・仙台市教育局学びの連携推進室主任)

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