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教師をめざす人のための臨床経験の理論と実践 「臨床の知」が拓く教員養成課程

14面記事

書評

森下 孟・青木 一 編著
現場経験と振り返り通じて成長

 本書は、信州大学教育学部の臨床経験科目についてまとめたものだ。同学部では「臨床の知」を教育の柱に掲げている。そもそも「臨床」とは、「病床(現場)に臨む」ことで医療の世界でよく使われるが教育の世界では聞き慣れない。ただし現場で学ぶ重要性は医療も教育も同じである。同学部では「理論と実践の往還」で身に付ける知を「臨床の知」としている。
 教員を目指す学生を対象として書かれている読み物だが、若手教員が読んでも自身の振り返りに役立つ。本書の目的が「学び続ける教員の育成」であり、幾つになっても「理論と実践の往還」は重要だ。
 内容は、臨床の知、教師の学びに始まり、学級経営、心理的支援、授業観察の視点や教育実習、教職実践演習など多岐にわたる。特に臨床経験におけるリフレクションの重要性を強調している。チャプターごとに「考えてみよう」という課題が設けられ、「さらに深めるには」という参考図書の紹介もあり、学生が勉強しやすい構成となっている。
 ご存じのように日本は教員免許の開放制を実施している。つまり教育学部以外でも免許が取得できるわけで、評者もその口である。本書を読んでみて、教育課題が複雑化している現在、このような教育学部とそれ以外の学部出身者では、質の担保という点で、大きな差が生まれるのではないかと心配になってきた。
 (3300円 北大路書房)
 (中村 豊・公益社団法人日本教育会事務局長)

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