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一刀両断 実践者の視点から【第416回】

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叱責受けた生徒の死
 
 《市立中学3年の男子生徒の自殺、教諭のどなり声が原因の「指導死」と市を提訴へ…遺族「言葉の暴力で亡くなる命がある」》(読売新聞社)という見出しの記事からは様々な背景が見えてくる。
 提出物を出していない為に職員室で叱責したのならば、そこに居た職員はどう対応したのかと言う疑問がある。
 また、そこまでするのなら日常的に過度な言動があったはずである。そしてその言動を指導し改善させる立場にある管理職の姿が見えない。
 さらに、そうした指導は保護者にも伝わっていただろうから、他の保護者や教委への動きもあって然るべきではないだろうか。
 これを指導死としているが明らかに指導とは異なるレベルの言動であり、指導という言葉を当てる事は不適切ではないだろうか。
 加害者である教師は指導と考えているズレがあるし、それを指導とする事自体に問題がある。何故なら指導は指示伝達ではなく、納得であるからであり相手に伝わらなければ指導とはならないからである。
 この教師の言動と周りの職員の責任は明らかな犯罪のレベルであり、自死に追いやった殺人行為と言われても致し方ない。他の職員も幇助の加担者として罰せられるべきである。
 こうした職員を雇用した行政が税金から賠償金を支払ったとしても、実質的な痛みは異なる。やがて風化されてしまう殺人事件が日常化している日本の制度はこうした不幸の連鎖を止める事は出来ていない。それが分かっていて改善しないのは、その不整備により利益を得るものが存在するからではないだろうか。
(おおくぼ・としき 千葉県内で公立小学校の教諭、教頭、校長を経て定年退職。再任用で新任校長育成担当。元千葉県教委任用室長、元主席指導主事)

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