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子どもの社会的行動のアセスメント 早期発見と支援に生かせる乳幼児健診でのままごと遊び

12面記事

書評

神尾 陽子 監修 別府 悦子・宮本 正一 編著
小さな自治体の画期的取り組み

 岐阜県本巣市は人口3万5千人。平成の市町村合併で生まれたこの小さな市では、4カ月・10カ月・1歳6カ月・2歳・3歳の5回の乳幼児健診が行われている。保健師や心理士、発達相談員や歯科衛生士など、さまざまな専門職が協同しながら、子どもたちの健やかな発達を目指す取り組みを進めている。本巣市と中部学院大学は協定を結び、発達心理学者たちも積極的に関与して、専門的視点から活動を支えてきた。
 本書は、その歴史的な経緯と成果をまとめたものである。地域における乳幼児の発達保障の実践・研究活動として画期的なものだといえよう。
 健診活動の主眼は、自閉スペクトラム症などの社会性の発達に困難さを抱える子どもの早期発見である。本巣市では、子どもの社会性の発達を正確に把握するために、日本語修正版M‐CHAT(乳幼児期自閉症チェックリスト…保護者評定)と、ままごと遊び(目が合う、指さしなどの社会的行動をチェック)の二つを併用している。さらに、全市の乳幼児健診時の膨大な資料の分析を通じて、アセスメントの信頼性や妥当性を検証している。
 早期発見を早期支援に結び付けていくには、専門家による療育だけでなく、家庭における子どもへの適切な関わりが不可欠である。本巣市でのアセスメントの方式は、その可能性を大きく切り開いていくものである。
(2970円 風間書房)
(都筑 学・中央大学名誉教授)

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