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教師の学び直しを妨げる、教師不足を解消するには

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 教師の学び直しによる資質能力の向上や複数免許取得が望まれる一方、学校現場では教師不足が年々深刻化している。ここではその要因と対策について紹介する。

1年前より「悪化」が4割

 教員の「働き方改革」が急務となる中で、課題の一つに浮上しているのが教師不足の問題だ。文科省が2021年に行った調査では、年度初めの4月時点に不足している教師の数は2500人を超えた。しかも、学校が過少申告するケースや、時間経過とともに離職率は増える傾向にあるため、実態はより深刻化しているものと考えられる。また、昨年に各都道府県の教育委員会に実施したアンケート結果でも、同時期における教師不足の状況が1年前より「悪化した」と答えた割合が4割に及び、改善が速やかに進んでいるとはいえない状況だ。
 学校内の教師数が足りないと、担当する科目や業務などが増えて労働時間が増加するほか、教師が専門外の科目を担当することで授業の質の低下にもつながりかねない。学校によっては校長や教頭、教務主任が学級担任を務めているところもあり、そうなれば教育現場の円滑な運営にも支障が生じてくる。
 教師が不足している理由は、残業時間の多さなど教育現場の常態化した労働環境から、教師を希望する人材が減っていることを筆頭に、団塊の世代が一斉に退職時期を迎えていることや、特別なニーズや教育的な配慮が必要な子どもが増え、児童生徒1人あたりの教師数を増やすことが求められていること。しかも、自治体の予算が限られ、いつもギリギリの編成を強いられていることに加えて、教師不足を補うための「臨時的任用教員」自体も、職業上の不安定さから「なり手不足」が顕著になっており、スムーズに人材を手当てできない背景もある。

「特別免許状」の強化や「ペーパーティーチャー」の掘り起しも

 こうした教師不足の解消に向けて文科省では、公立学校教員採用選考試験における取り組みの収集・発信、「学校・子供応援サポーター人材バンク」等を通じた講師のなり手確保に向けた取り組みや、勤務環境の改善を含めた教職の魅力向上などに力を入れている。また、現時点で4%にとどまる民間企業等の経験者を採用する「特別免許状」や、いわゆる「ペーパーティーチャー」の掘り起こしを強化することにも乗り出している。その中では、優秀な人材を確保するため、2024年度から採用試験の前倒しを実施するほか、教員免許状を保有しているものの、長らく教壇に立っていない者がスムーズな入職を支援できるよう、オンラインで利用のできる学習コンテンツの開発も行っている。
 さらに自治体においても、年齢制限の拡大・撤廃を図り、ミドルリーダーとなり得る30代~40代の採用や、定年退職後の再任用を積極的に進めるほか、高度理系人材や英語のネイティブ教員、ICTのスペシャリスト、スポーツで優秀な活動実績を有する者等を対象とした採用選考試験を実施するところも現れている。加えて、教育委員会と大学が連携し、インターンシップ事業や教師養成塾の取り組みを展開したり、大学推薦枠を設けたりして採用を推進している自治体もある。

教師を本業に戻す改革を

 文科省が目指す「令和型チーム学校」を構築するためには、教師の養成・採用・現職の各段階を一貫した改革が必要で、それには大学との連携を含めた教師の養成段階からの支援が必要になるとともに、多様な専門性を有する人材を教育界の内外から確保していく必要がある。だからこそ、カギを握るのは教師が魅力ある職業と受け取られるように、マルチタスクが常態化している労働環境を一刻も早く改善していかなければならない。
 それには教師として行う仕事のすみ分けをもっと明確に定め、それ以外の仕事を代替する人員を充当していくことは不可欠だ。具体的には、資料作りを手伝う補助員やICT機器の管理を受け持つ支援員、いじめ対応や子どもの精神的ケアを担う「スクールカウンセラー」、家庭や児童相談所などの間を取り持つ「スクールソーシャルワーカー」などを増やしていくこと。部活動の民間委託や給食費などの徴収など授業以外の業務も手離れしていき、負担軽減を図っていく。加えて、産休・育休取得者の増加、定年延長など教師のライフサイクルの変化を前向きに捉え、採用や配置等を工夫することも併せて実現していく必要がある。

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