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LD(ラーニングディファレンス)の子が見つけたこんな勉強法 「学び方」はひとつじゃない!

14面記事

書評

野口 晃菜 田中 裕一 編著
当事者の多様な工夫を紹介

 本書ではマジョリティ(多数派)と学び方が異なることを「LD」と呼び、当事者や家族がどんな工夫をしてきたかといったことを分かりやすく紹介する。教科の他、読み、書き、消しゴム、聞く、発表、テスト、対人関係、ストレス対応など、例も広範にわたる。
 学び方において、全ての人に当てはまる「唯一の解」はない。いろいろな選択肢から本人が選んだり試行錯誤したりして見つけていくのが一番だ。大事なのは本人の声。保護者や支援者、専門家も、工夫の押し付けになっていないかを振り返るべきだとくぎを刺す。
 「田」という漢字が大きな四角に十が入っているのではなく小さい四角が四つあるように見える、文字を読むときに字が動いて見えるなどの当事者の声を、そうではない「多数派」が知ることも重要だろう。「そうなのか」と受け止めてくれる大人の存在が大事だということも理解しておきたい。
 ディスレクシア(発達性読み書き障害)などへの合理的配慮が手厚い英国の学校の例なども参考になる。日本でできない理由があるだろうか。
 当事者でもある落語家、柳家花緑さんの「世間はあなたが思っているよりもずーっと優しい!」「自分を許そう! 自分を受け入れよう! そこがスタートでゴールだ」といった感覚を、本書を通じて大勢の人が共有できるようになることを願いたい。
(1980円 合同出版)
(浅田 和伸・長崎県立大学学長)

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