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言葉の力を育てる

19面記事

書評

梶田 叡一 著
豊かに生きるための土台づくり

 精神活動の源として、私たちの思考や知識、経験に多大な影響を及ぼしている言葉。本書は、その言葉の力の意義と育て方、教え方などを考察し、豊かに生きる道を探っている。
 前回の学習指導要領の改訂で、「言葉の力」を育てるための「言語活動」をあらゆる教科等の学習の基礎として重視する方向が打ち出されたが、著者は、その改訂時の中央教育審議会の教育課程部会長として言葉の問題を多面的に考えてきただけに説得力と重みを持つ。
 本書の中で著者は、まず言葉の主要な働きとして、認識、記録、思考、伝達、精神の呪縛・解放・鼓舞、文化の継承・創造のそれぞれの道具としての機能を果たすことを再確認した上で、母語としての日本語の意義、言葉の力の基礎づくり、体験の経験化と言葉、古典的な名句・名文の暗唱や文学作品との出合いの意義などを強調。芭蕉の俳句や島崎藤村の詩を例に、確かな読み取りで豊かな受け止めを求める。また、学習の基盤となる言葉の力の育成には、読み・書きを中心とした言語活動が重要性を持つとし、読み・書きの力について、

 (1)語句と約束事
 (2)全体的論理構造
 (3)イメージや情念

 ―の三つの水準を留意しながら指導するよう提唱している。
 エピローグでは、言葉の力を鍛えていくことで、賢く認識し、賢く思考し、賢く判断できるようになるという。人間の活動の土台にある言葉を改めて考えたい。
(1980円 金子書房)
(矩)

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