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一刀両断 実践者の視点から【第458回】

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ドラマと現実は違う

 《金八先生以後に生じた「学校=悪という構図」「学校が良いサービスを提供して当たり前という考え方」…工藤勇一校長が指摘する<近年の教育現場が抱える問題点>とは》(婦人公論)という見出しの記事には納得した。私はこの負の部分が巻き起こした出来事の方が印象に残っている。
 熱血教師を自分に重ねてその気になっていた薄っぺらな教師が量産された。児童生徒の悩みを分かったふりをして意見や感想を言う為にさらに深みにハマって行ったケースは至る所に生まれた。
 つくられたドラマを現実に当てはめていい気になったのである。
 その実例が今でも思い浮かぶ。隣のクラスにM君が居たが、集団に馴染めないでよくトラブルを起こしていた。
 担任はそのMをリーダーにすべく至る所で活用した。やがて担任の代理もする様に仕組まれて、際立った行動を始めた。金八風の担任は本人の暴走を止められなくなり、厄介者扱いをした。
 その折Mが足を挫いて松葉杖になった。皆からの注目や同情を得たい為にあえて足を引きずる仕草を人前では見せていた。
 それを注意できなくなっていた担任は放置して半年過ぎた頃には、足は3センチほど短くなり元には戻らなくなっていた。この担任でなかったらこんなことは起こらなかったであろう。
 上辺だけの言動は家庭内にも及び、妻である教師にも事細かに指示をして管理した為に精神を病み家庭を崩壊させて行った。憧れと足元の現実は違うし、夢物語を熱く語ったあの頃のメッキの教師はどうしているだろうか。
 あのドラマのかなりの部分が与えた教育現場への悪影響をあの頃から折に触れて警告してきた。肩までの髪までも真似る幼稚な面々はどこへ消えたのか。
(おおくぼ・としき 千葉県内で公立小学校の教諭、教頭、校長を経て定年退職。再任用で新任校長育成担当。元千葉県教委任用室長、元主席指導主事)

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