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高校・大学・社会 学びと成長のリアル 「学校と社会をつなぐ調査」10年の軌跡

14面記事

書評

溝上 慎一 責任編集・(学)河合塾 編
学校での学び 仕事にどう影響

 教育政策に関する議論では、「エビデンス」(統計データなどの科学的根拠)の不足がよく言われる。教師など当事者の経験知は関係者間では説得力を持つが、それだけでは第三者の納得を得ることが難しい。
 本書は、2013年に当時の高校2年生を対象として開始し、その後、大学時代を経て、社会人3年目までの10年間にわたり実施された「学校と社会をつなぐ調査」の最終成果を報告するとともに、それを基に高校から大学、仕事・社会へのトランジション(移行)について、さまざまな角度から論じている。
 国でも「21世紀出生児縦断調査」があるが、類例が少ないだけに極めて貴重なデータだ。
 本調査から実証的に得られた知見は多い。その中で今後の視座として重要と思われるのは、例えば、(1)高校から大学、仕事・社会へとかけて、資質・能力がクラス移動をするほどに大きくは変化しないこと(2)人はそれでも成長するということ(3)高校時代の学習態度やキャリア意識等が社会人の仕事の仕方や能力等に直接的に大きな影響を及ぼすのではなく、「間接効果の積み重ね」によって成長するということなどだ。
 これらは、高校教育、あるいはそれまでの段階の教育の重要性を示唆するものでもある。
 こうした成果の上に、さらに多くの研究が積み重ねられていくことを願いたい。
(2640円 学事出版)
(浅田 和伸・長崎県立大学学長)

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