日本最大の教育専門全国紙・日本教育新聞がお届けする教育ニュースサイトです。

長寿命化改修で環境性能を高める

11面記事

施設特集

ZEBの定義とは

 学校施設の長寿命化改修で対応していく必要があるのが、脱炭素化を促進するためのZEB化になる。ZEBとは快適な室内環境を実現しながら、建物で消費する年間の一次エネルギーの収支をゼロにすることを目指した建物のこと。具体的には、高い断熱性能の壁や窓、電力消費の少ないLED照明などによって使うエネルギーを減らし、太陽光発電などの創エネによって使う分のエネルギーを生成することで、エネルギー消費量を正味でゼロにすることが可能になる。
 現在では、その削減率によって4段階にZEBを定義している。「ZEB」=省エネ+創エネで0%以下まで削減。「Nearly ZEB」=省エネ+創エネで25%以下まで削減。「ZEB Ready」=省エネで50%以下まで削減。そして、延べ面積1万平方m以上の建築物が対象の「ZEB Oriented」だ。

先導的なZEB化事例を発信

 こうした中で、公共施設の約4割を占める学校施設の環境性能を高めることは、持続可能な社会の実現に向けた重要なステップであり、教職員や子どもたちへの快適で健康的な温熱環境の確保と、エコロジカルな価値観を養うためにも大切な取り組みになる。
 学校施設におけるZEB化のメリットとしては、光熱費の削減や快適性・生産性の向上を筆頭に、エネルギーの使われ方や導⼊した技術の仕組みや原理を「⾒える化」することにより、環境教育の教材として活⽤できることが挙げられる。しかも、災害時に必要なエネルギーの削減や自立につなげることも可能になる。
 しかし、現状ではZEB化を実現した学校施設は全国でも限られており、今後推進していくためには先導的なZEBの整備事例や技術的ノウハウの蓄積・発信が重要となっている。このため文科省は3月、学校施設の新築・改修においてZEB化を達成した事例を集めた「学校施設のZEB化の手引き」を公表した。
 本⼿引きでは、さまざまな⼯種のうち、主に「外皮断熱」「高効率空調」「高効率照明」にコストを上乗せすれば、建物のZEB化は達成できるとしており、「改修するだけでも大変なのに」と考えている学校設置者に対し、そのコストや⼯夫などの取り組み内容を紹介することで、ZEB化を検討する足掛かりにしてもらうことが⽬的だ。

老朽化改修で「Nearly ZEB」を達成

 その一つ、⼭形県上山市立南小学校は、築44年の校舎・体育館に対し、空調・換気・照明設備等の最適化・高効率化を図りつつ、教室等の窓を改修。さらに、太陽光発電設備を設置することで「Nearly ZEB」を達成した。内訳は、省エネ率59%と創エネ率17%になる。
 具体的なZEB工事としては、屋根・外壁・床等は既存のまま、窓はLow―E複層ガラス、照明は明るさセンサー等を備えたLEDに。空調設備は高効率パッケージエアコン、⾼効率ビルマル。換気設備は全熱交換器、排⾵機。創エネとして太陽光発電113kw、蓄電池40kWhを整備し、災害時には避難所として活⽤する体育館の照明、コンセントに電源供給を⾏えるようにした。加えて、施設全体の空調・換気、照明等の電⼒量がモニタリングできるクラウド型の計測装置を採用し、設備ごとのデマンド制御を可能にしているのが特徴だ。

まずは「断熱改修」から

 本手引きでは、このように適切なコストをかけることで、新築だけではなく、⼤規模改修⼯事においてもZEB化が可能であると言及。ただし、予算や建物個別の要因で達成できない場合でも、必ず実施してほしいのが「断熱⼯事」だと指摘する。
 なぜなら、断熱⼯事は内装や窓の撤去が伴うため、大規模改修時に併せて実施しておけば、後で省エネ対応の空調・換気設備に更新するだけで「ZEB Ready」を達成できるからだ。
 すなわち、将来的にかかるコストを鑑みてZEB化を実現するためにも、まずは「断熱改修」から実施していくことが重要といえる。

施設特集

連載