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これからの特別支援教育はどうあるべきか

13面記事

書評

全日本特別支援教育研究連盟 編著
学校全体での推進へ具体的な提言

 令和4年の文科省の調査によると、「知的発達に遅れはないものの通常の学級において学習面又は行動面で著しい困難を示す」とされた小・中学校の児童・生徒の割合は8・8%であり、学校全体で特別支援教育を推進していくことは喫緊の課題といえる。
 本書は、知的障害等発達障害のある子どもの教育を支援する団体の研究者や実践家による現状への課題提起であり、発展的視点を踏まえた今後の具体的な展望を提言している。
 例えば第2章の「乳幼児期の支援と就学への支援」の項では、子どもや保護者が安心して就学を迎えるための六つの要点が示される。また「本人参画の基礎となる意思決定の支援」の項では、知的障害がある子どもが、学校教育において意思決定の基礎となる十分な体験が保障され、決定に必要な情報を活用しながら自身の意思として表出させる場を意図的計画的に整える必要性が述べられるとともに、「意思決定の3ステップ」の表が、その支援に当たる際、大変参考になる。
 さらに、第3章の「多様なニーズのある児童生徒に求められる対応」の項では、ポジティブ行動支援やテクノロジーを活用した対応など、現場ですぐ使える具体的な手だてが複数紹介されている。学校全体で特別支援教育に取り組む上で、まず、管理職に一読を勧めたい。
(2090円 東洋館出版社)
(重森 栄理・広島県教育委員会乳幼児教育・生涯学習担当部長(兼)参与)

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