おさらい 新共通テスト 変更のポイント(2)
10面記事歴史総合の試作問題。探究科目との組み合わせでは5問中の1問
探究通じ歴史的事実の関連を理解
地歴・公民
新教育課程に対応して出題科目の構成が変わる地理歴史・公民。共通テストでは、必履修の「地理総合」「歴史総合」「公共」の組み合わせと、必履修・選択の組み合わせの計6科目の中から最大2科目を選んで解答する。2科目受験する場合には、選択できない組み合わせがあり、注意が必要になる。選択パターンは複数あるが、難関国立大学などでは必履修の組み合わせ科目の利用を認めていない。
地理歴史科の教員の中で関心が集まっているのが新設科目の「歴史総合」だ。近現代の日本と世界の関わりなどを扱うが、これまでの「世界史A」「日本史A」の統合科目ではない。広い視野に立ち、国際社会で主体的に生きるために必要な「公民としての資質・能力」の育成を目指している。
大学入試センターの示した問題作成方針によると、教科書で扱われていない資料の情報と授業で学んだ知識を関連付ける問題や、時代や地域を超えて特定のテーマについて考察する問題を検討するとしている。試作問題では19世紀のアジア諸国と欧米諸国の接触などが扱われ、図や写真、グラフの読み取りなども問われた。
学習指導要領の改訂に先駆け、「歴史総合」を実践してきた神戸大学附属中等教育学校の奥村暁教諭が、試作問題の中で「示唆的な内容だった」と挙げるのが、世界史探究とセットになった歴史総合の問題B。国民国家とナショナリズムについて扱った出題だったが、選ぶ国によって次の問題の正答が変わる形式だった。ナショナリズムという近代の中核的な概念についての認識を問う問題だったと奥村教諭は見る。「こうした問題の割合がどこまで増えるか分からないが、歴史総合の探究活動を問題に落とし込もうという意図が読み取れた」
一問一答式の学習では歴史的事実の間の十分な結び付きが得られず、新課程に対応するのは困難だ。ではどんな学習活動が必要となるか。「概念と概念の間の関係をたくさん理解させることが重要になる。ナショナリズムを例にすれば、国民意識をもたらすという意味だけでなく、少数民族の同化を伴ったという事実や植民地支配からの脱却の動き、ガンディーの不服従運動やその理由など。大きな概念を結び付ける方向で、自ら探究して他の部分にも広げていく活動が求められる」
歴史は暗記科目から脱却できるのか。来年行われる歴史総合の初めてのテストが、その行方を大きく左右すると奥村教諭は言う。
変更点
・地理総合、歴史総合、公共が出題科目に
・出題科目を従来の10科目から6科目に整理
・選択できない組み合わせもあり