学校に行かない僕の学校
18面記事尾崎 英子 著
居場所見つけ変わる主人公
ある出来事をきっかけに「最終的には不登校」になっていた「僕」は、14歳の夏、母の車で送ってもらい、森の中にある全寮制のフリースクールに入った。どうしてここがいいと思ったのか、自分でもうまく説明できない。
そこにいるのは、同じ日に来た同学年の女子を含め、小5から中3までの11人。不登校の子たちだから陰キャラが多いかと思っていたが、むしろ元気過ぎるくらいだ。
皆、心に何かしらの影を宿している。緩やかなルール、ゆっくりした時間と自然の中で、自分の心と向き合い、時に人に心を開く。
子どもたちが時々畑を手伝いに行く所のおばあさんは、「逃げたっていいと思う。人生には、そうしないといけない時もある。だから、そんな自分を責めたらダメよ」と言う。
高い木になれそうもない僕は、間引かれていいんだ。みんなができることができない自分なんて、生きている価値がない。そんなふうに自分を否定し続けていた僕の中で、何かが変わり出す。そして、ずっと心に引っ掛かっていたことを、ある人に伝えに行く。
物語の登場人物たちと同じように、息苦しくなく生きられる居場所を見つけられずに苦しんでいる子たちがいる。その子たちが悪いのか。そうではないよね。森の奥でなくても、誰もが自分に合った居場所を見つけられるような、もっともっと包容力のある社会にできればと思う。
(1760円 ポプラ社 https://www.poplar.co.jp)
(浅田 和伸・長崎県立大学学長)