職場の熱中症対策、罰則付きの義務化へ~厚労省 6月1日より施行~
11面記事職場における熱中症対策を強化
酷暑が激甚化するわが国では、熱中症に対しても防災意識を高めていくことが欠かせなくなっている―。こうした中、厚生労働省は「労働安全衛生規則」の一部を改正し、職場での熱中症対策について、罰則付きの義務化とする改正省令を公布。6月1日より施行することを発表した。
対象になるのは、暑さ指数28以上または気温31度以上の環境下で、連続1時間以上または1日4時間を超える作業。事業者が対策を怠った場合、6ヶ月以下の懲役または50万円以下の罰金が科されることになる。
義務化の内容は、
(1)熱中症の自覚症状や疑いのある人がいた場合、報告するための連絡先や担当者を事業所ごとに定める。
(2)作業からの離脱、身体の冷却、必要に応じた医師の処置や診察など、症状の悪化防止に必要な内容や手順を事業所ごとに定める。
(3)対策の内容を労働者に周知すること。
つまり、企業は従業員の健康と安全を守るための具体的な対策を講じることが必要になる。
その理由としては、職場における熱中症による死亡災害が、ここ数年30人を上回るペースで発生していること。熱中症が死亡災害に至る割合は、他の災害の約5~6倍多いこと。死亡者の約7割は屋外作業であるため、気候変動の影響により、さらなる増加の懸念があることを挙げている。
死亡災害の大半は「初期症状の放置・対応の遅れ」
熱中症を重篤化させないためには、
(1)可能な限り早期に異常が認められる者(熱中症になりそうな者)を発見すること。
(2)異常が認められる者に対し、「暑熱作業からの早期離脱」、「早期の身体冷却」、「有効な休憩設備の利用」、「ちゅうちょない医療機関への搬送(水分摂取などの様子がおかしい場合)」を実施すること
―が重要になる。
しかし、同省の調査によれば、これまで起きた職場における熱中症による死亡災害のほとんどが、重篤化した状態で発見されるなどの「初期症状の放置」や、医療機関に搬送しないなどの「対応の遅れ」であることが分かっている。したがって、早急に求められる対策として、現場において死亡に至らせない(重篤化させない)ための適切な対策の実施が必要になっている。
なお、異常を発見するための対応としては、職場巡視などによって自覚症状の有無や受け答えに異変がないかを確認することが必要であるが、具体的な実施方法については、現場の実情に応じ、バディ制やウエアラブル端末の活用など実効性の高い方法とするべきとしている。
また、異常が認められる者が発生した場合の対応に関する教育については非常に重要と指摘。作業者に対する教育は「熱中症予防管理者」など、熱中症予防対策に詳しい管理者を各現場において選任し、その者が中心となって実施することが望ましいとしている。