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人と社会をつなぐ評価 孤立化と分断を超えて

12面記事

書評

南浦 涼介・三代 純平・石井 英真・中川 祐治・佐藤 慎司 編著
新たな価値創造を目指すヒント

 「物語るという行為とその結果構築された物語」を指し示す「ナラティブ」に基づく評価を基軸にした評価の在り方を提案する。本書が主に扱うのは日本語教育の世界。ナラティブ評価につながる、創意工夫した日本語教育のさまざまな実践に触れることができる。
 従来の日本語教育と評価が言語教育を重視し、習熟を測るテストに向き合うことを主にしたのに対し、「学習者と社会をつなぎ、学習者、そして社会の成長と発展に資するものであり、共に新しい価値をつくっていく活動」と「評価」を捉え直す。
 同時にナラティブ評価の考え方で「必ずしも数値化・指標化されないけれども重要な教育の営みに価値づけができる評価の発想」を持ち「評価と教育の関係を探ることに寄与するはず」と、「公教育としての学校」での評価の在り方を逆照射する。
 学校関係者にとっては「教育評価研究の系譜と『評価』概念の問い直し」(第1部理論編)や、公立小学校での「善元幸夫の実践からナラティブ評価を発見する」(第2部実践史編)、外国人児童が多く在籍する公立小学校を取り上げた「声と姿でつなぐ子どもたちと学校・地域」(第3部実践編)などの教育評価論、外国につながる子どもたちとの実践から、ナラティブ評価の視点を感得できる。
 価値の創造を目指す、新たな授業、活動を生み出すヒントになるのではないか。
(2970円 東信堂)
(矢)

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