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先生たちのフロネーシス リフレクションを超えた授業改善の考え方

20面記事

書評

千々布 敏弥 著
学校の姿 豊富な事例で紹介

 タイトルにある「フロネーシス」とは、知の体系に関するアリストテレスの用語である。本書は、長年にわたり教育委員会や学校現場と交流し、さまざまな問題に直面してきた著者が、この術語を手掛かりに新たな視座からリフレクション研究を深めた意欲作である。令和3年に刊行された好著「先生たちのリフレクション」の続編に当たるのだが、ここでは「教師が学ぶべきことは学ぶ=エピステーメーの学び」と「教師が考えるべきことは考える=フロネーシスの学び」が区別され、両者を包摂した教師の思考の姿が提案されている。
 特に重要なのは教育観の省察であり、個人レベルのみならず、組織レベルのフロネーシスが不可欠となる。コルトハーヘン、センゲ、シャイン、キデンズ、フランなどの諸理論が参照され、章を追うごとにフロネーシスの輪郭がはっきりしてくる。問題解決思考、エージェンシー、ポジティブ・プレッシャーなど数々の鍵概念も理解を深めるための助けとなる。
 また、抽象的な議論にとどまらず、フロネーシスへと向かう教師・学校の姿が豊富な事例を交えながら紹介されているため、読者はその生きたありようをつかむことができる。本書を読めば、教育を巡る「あれか/これか」(教師主語か子ども主語か、トップダウンかボトムアップかなど)の両方を大切にするための確かな筋道が与えられるだろう。
(2530円 教育開発研究所)
(井藤 元・東京理科大学教授)

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