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一刀両断 実践者の視点から【第694回】

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論説・コラム

「ぶれない言動」と主権者教育

 海に浮かぶ図書館が就航したという。設計を手がけたのは、世界的建築家の安藤忠雄氏である。この図書館には、子どもたちが元気になるようにとの願いが込められている。
 安藤氏は大学ではなく、独学で建築を学んだ。近年は病により複数の臓器を失ったが、それでもなお意欲的に活動を続けている。その不屈の姿勢に、心を打たれる思いがする。
 特に、子どもに目を向けたぶれない言動には、これまでの試練を乗り越えてきた自負がにじんでいる。
 今回の参院選では、さまざまな情報が錯綜している。耳ざわりの良い公約を掲げる候補者は多いが、その根拠はあいまいである。日本人は基本的に個人主義ではなく、他者を信じやすい傾向がある。言い換えれば、お人好しなのである。その性質につけ込んで、人々を誘導しようとする者たちが各所に存在する。
 主権者教育は、より実効性のあるものにしなければならない。さもなければ、言葉巧みな主張に乗せられる若者が増え、国家の未来はますます不透明になる。このままで本当に良いのか。主権者教育は、今こそ最重要課題とすべきではないか。
 若者の投票率や政治への関心は一見高まっているようにも見えるが、実際には情報の多さに振り回され、判断力を失っているようにも感じる。そうした状況は、権力を握る側にとっては都合が良いのかもしれない。
 安藤忠雄氏が持ち続ける「青年の心」は、教師にも教育委員会にも保護者にも、そして若者自身にも向けた強いメッセージである。
(おおくぼ・としき 千葉県内で公立小学校教諭、教頭、校長を経て定年退職。再任用で新任校長育成担当。千葉県教委任用室長、主席指導主事、大学教授、かしみんFM人生相談「幸せの玉手箱」パーソナリティなどを歴任。教育講演は年100回ほど。日本ギフテッド&タレンテッド教育協会理事。)

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