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シン読解力 学力と人生を決めるもうひとつの読み方

18面記事

書評

新井 紀子 著
論理的文章理解の重要性を指摘

 「東ロボ」の開発者で、数年前に注目を浴びた『AIvs.教科書が読めない子どもたち』の著者による続編。「シン読解力」というスキルを提唱する。AIの進化は目覚ましく、チャットGPTはあっという間に日常生活に浸透し、流暢な文章を生成している。しかし、現状の生成AIはウェブ上に蓄積されたデータを基にしているので「平気でウソをつく」という。
 今や「AIvs.人間」でなく「人間×AI」の時代。AIを使いこなすためには論理的に書かれた文章を読み取る力が必要となる。資格試験問題や行政文書、各種解説などを「正しく読む」ことが「生きる力」となっていく。それが著者の提唱する「シン読解力」だ。
 「シン読解力」はトレーニングによって身に付けることができるとし、リーディングスキルテスト(RST)を開発。六つの分野の問題例が示されている。知識は不要で、提示文に示されたことだけを問うので、ちゃんと読めば正解できるはずというもの。挑戦してみると読めていない自分に気付く。
 また、学習言語は生活言語と異なっており、教科書が使っている言葉でつまずいている子どもが少なくないと指摘する。即座に情報処理をしながら生きていく時代。認知能力の育成を怠ってはならない。その土台は、語彙と経験にあるとする。
 「教える」ことを仕事にしている人は本書によって認識をアップデートするに違いない。
(1980円 東洋経済新報社)
(正)

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